薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 実践問題 - 問 238,239
40歳男性。喫煙歴20年、気管支ぜん息の治療のためテオフィリン製剤を服用している。最近、ぜん息症状が悪化してきたこともあり禁煙を試みたいと薬局を訪れた。薬剤師は、ニコチンガム、ニコチンパッチ及びバレニクリン酒石酸塩錠について情報提供を求められた。
問238(実務)
薬剤師が禁煙とその治療薬について説明する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 禁煙したときのつらさは、ニコチン離脱症状により起こります。
2 いずれの薬も医師の処方せんが必要です。
3 ニコチンパッチは、禁煙開始前から使用することができます。
4 コーヒーや炭酸飲料を飲んだあとニコチンガムを使用すると、ニコチンが吸収されやすくなるので注意が必要です。
5 バレニクリン酒石酸塩錠は、禁煙に代わってニコチンを補充する薬剤ではありません。
問239(衛生)
たばこの煙と喫煙に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 喫煙によりシトクロムP450のうち、主にCYP3A4が誘導される。
2 テオフィリン製剤を服用している喫煙者が禁煙すると、テオフィリンの血中濃度が低下する可能性がある。
3 たばこの煙には、一酸化炭素や窒素酸化物が含まれている。
4 妊娠中の喫煙は、低体重児の出産のリスクを高める。
5 アルコールを摂取すると、喫煙によって誘導されるのと同じCYP分子種が誘導される。
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問238 解答 1、5
1 正
たばこの煙にはニコチンが含まれており、ニコチンは精神及び身体依存を形成する。よって、禁煙をするとイライラ、頭痛、便秘などの離脱症状が発現する。
2 誤
ニコチンガムは一般用医薬品、ニコチンパッチは一般用医薬品及び医療用医薬品、バレニクリン酒石酸塩錠は医療用医薬品である。医療用医薬品は原則として医師の処方せんを必要とするが、一般用医薬品は医師の処方せんなしで購入できる。よって、いずれの薬も医師の処方せんが必要なわけではない。
3 誤
ニコチンパッチやニコチンガムは、喫煙の代わりにニコチンを補充するものであり、喫煙中に使用するとニコチンの過剰摂取により吐き気やめまい、腹痛などが起こることがあるため、禁煙後に服用を開始する。なお、バレニクリン酒石酸塩は、患者が禁煙を開始する日の1週間前から投与を開始する。
4 誤
ニコチンは塩基性物質であり、コーヒーや炭酸飲料を飲んだあとは口腔内が酸性となるため、分子形の割合が減少し、口腔粘膜からの吸収が低下する。
5 正
バレニクリン酒石酸塩錠は、ニコチンを含まない禁煙補助薬であり、大脳皮質に分布するα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に結合することによって禁煙に伴う離脱症状や喫煙欲求を軽減する。
問239 解答 3、4
1 誤
喫煙によって誘導されるシトクロムP450(CYP)は、主にCYP1A1及びCYP1A2である。
2 誤
テオフィリンは、主にCYP1A2によって代謝される。テオフィリン服用時の喫煙は、CYP1A2の誘導によりテオフィリンの代謝を亢進させるが、禁煙するとCYP1A2が誘導されなくなるため、喫煙時に比べてテオフィリンの血中濃度が上昇する可能性がある。
3 正
たばこの煙には、一酸化炭素や窒素酸化物のほか、タール、ニコチン、ベンゾ[a]ピレンなど多数の有害物質が含まれている。
4 正
胎児は、へその緒の血管を通して妊婦から栄養を得ているが、妊娠中の喫煙は血管を収縮させ、胎児への十分な血液の供給を妨げるため、低体重児の出産のリスクを高める。
5 誤
アルコールの摂取によって誘導されるCYPは、主にCYP2E1であり、喫煙によって誘導されるCYPは、主にCYP1A1及びCYP1A2であることから(解説1参照)、喫煙によって誘導されるのと異なるCYP分子種が誘導される。
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