薬剤師国家試験 平成29年度 第102回 - 一般 実践問題 - 問 298,299
56歳男性。一般用医薬品を購入するため薬局を訪れた。現在使用している処方薬について薬剤師が確認したところ、持参したお薬手帳から、以下の点眼薬を使用していることが判明した。
また、お薬手帳には、点眼薬による治療開始前に測定された眼圧が記載されていた。
(眼圧)右28 mmHg、左27 mmHg
問298(病態・薬物治療)
この患者の病態とその治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 この患者は正常眼圧緑内障である。
2 眼圧コントロールが不良となり視神経が高度に障害されると、その機能は薬物治療によっては回復しない。
3 ラタノプロストは、毛様体における房水の産生を抑制し眼圧を低下させる。
4 ラタノプロストの副作用に虹彩色素沈着がある。
5 カルテオロール塩酸塩は、ぶどう膜強膜流出経路からの房水の流出を促進し眼圧を低下させる。
問299(実務)
この患者に一般用医薬品を推奨する場合、避けるべき成分はどれか。2つ選べ。
1 チキジウム臭化物
2 ジヒドロコデインリン酸塩
3 クロルフェニラミンマレイン酸塩
4 デキストロメトルファン臭化水素酸塩
5 無水カフェイン
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問298 解答 2、4
本患者は、眼圧が右28 mmHg、左27 mmHg(基準値:10〜20 mmHg)で高値であることと、処方されている点眼薬から、緑内障患者であると推測される。
1 誤
眼圧は基準値より高値であるため、正常眼圧緑内障ではない。
2 正
緑内障による視神経細胞の障害は不可逆的であるため、高度に障害されると、その機能は薬物治療によっては回復しない。
3 誤
ラタノプロストはプロスタグランジンF2α製剤であり、ぶどう膜強膜流出路からの眼房水の流出を促進させることで眼圧を低下させる。また、本剤はプロスタグランジン製剤の副作用として、虹彩や眼瞼への色素沈着を起こすことがある。
4 正
解説3参照
5 誤
カルテオロール塩酸塩はアドレナリンβ受容体遮断薬であり、毛様体のβ2受容体を遮断し眼房水の産生を抑制することで眼圧を低下させる。
問299 解答 1、3
1 正
チキジウム臭化物は抗コリン薬であり、眼房水流出抑制により眼圧を上昇させ、緑内障を悪化させるおそれがあるため、本患者には避けるべき成分である。
2 誤
ジヒドロコデインリン酸塩は延髄咳中枢を抑制する麻薬性鎮咳薬であり、緑内障への影響は報告されていないため、避けるべき成分ではない。なお、本剤は、強い呼吸抑制作用や線分泌抑制作用があるため、重篤な呼吸抑制のある患者や気管支ぜん息発作中の患者などへの投与は避けるべきである。
3 正
クロルフェニラミンマレイン酸塩は、ヒスタミンH1受容体遮断薬であるが強い抗コリン作用を併せ持つ。そのため、眼房水流出抑制により眼圧が上昇し、緑内障を悪化させるおそれがあるため、本患者には避けるべき成分である。
4 誤
デキストロメトルファン臭化水素酸塩は、延髄咳中枢を抑制する鎮咳成分である。本剤による緑内障への影響は報告されていないため、避けるべき成分ではない。
5 誤
無水カフェインは、脳血管収縮作用により頭痛などの改善に用いられる。本剤による緑内障への影響は報告されていないため、避けるべき成分ではない。
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