薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 214,215
54歳女性。再発転移性乳がんに対する化学療法としてドセタキセル・シクロホスファミド療法(4コース)を外来通院で行っている。2コース目で手指のしびれと痛みを訴えたため、牛車腎気丸エキス顆粒とブシ末の処方が追加された。
問214(実務)
追加処方の副作用として注意が必要な症状はどれか。1つ選べ。
1 腰痛
2 むくみ
3 動悸
4 冷感
5 排尿困難
問215(物理・化学・生物)
前問において副作用の主な原因となる生薬は、日本薬局方に収載されている。この生薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 キンポウゲ科植物ハナトリカブト又はオクトリカブトの葉を基原とする。
2 加工調製(修治)によってブシジエステルアルカロイド含量が増加する。
3 加工調製法が異なると総アルカロイド含量の規格値も異なる。
4 純度試験としてブシジエステルアルカロイド含量の上限値が設定されている。
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問214 解答 3
牛車腎気丸は、ジオウ、ゴシツ、サンシュユ、サンヤク、シャゼンシ、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、ブシ末から構成されており、下肢痛、腰痛、しびれ、排尿困難、頻尿、むくみなどに用いられる。また、牛車腎気丸はドセタキセルなどのタキサン系製剤、オキサリプラチンなどの白金製剤などの抗悪性腫瘍薬の副作用である末梢神経障害(手指のしびれなど)にも用いられる。
したがって、本問では、がん化学療法により現れた手指のしびれと痛みの改善のため処方追加が行われたと考えられる。
本問の追加処方の牛車腎気丸エキス細粒にはブシ末が配合されており、これに加えてブシ末が投与されているため、ブシ末の重複投与により、ブシ末に含まれるアコニチンなどの副作用である動悸、のぼせ、舌のしびれなどの発現リスクが増加する。
問215 解答3、4
1 誤
ブシは、キンポウゲ科植物ハナトリカブト又はオクトリカブトの塊根を基原とする。
2 誤
ブシは、毒性をもつアコニチンやジェサコニンなどのブシジエステルアルカロイドを含有しているため、一般に高圧蒸気処理などの加工調製(修治)によってブシジエステルアルカロイド含量を減少させることにより減毒して用いられる。なお、この加工調製によりブシジエステルアルカロイドのエステル結合部分が加水分解され、毒性の低いベンゾイルアコニンやアコニンなどが生成する。
3 正
ブシには、高圧蒸気処理以外にも複数の加工調製法があり、加工調製法が異なるとアルカロイドの量も異なるため、総アルカロイド含量の規格値も異なる。
4 正
日本薬局方におけるブシ末の純度試験において、ブシジエステルアルカロイド(アコニチンやジェサコニンなど)含量の上限値が設定されている。日本薬局方には「生薬の乾燥物1 gに対し、アコニチン、ジェサコニン、ヒパコニン及びメサコニンの量を求めるとき、それぞれ55 µg以下、40 µg以下、55 µg以下及び120 µg以下で、更にこれら4成分の総量は230 µg以下である。」と記載されている。
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