薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 230,231
65歳男性。長期にわたるアルコール依存症と診断されて、入院治療中。食事が摂れず栄養不良の状態であったが、さらに担当看護師より、眼球運動の異常やふらつき、意識障害が確認されるようになったと報告があった。この患者の症状の原因としてビタミン欠乏の可能性が考えられた。
問230(実務)
この患者で欠乏し、症状の原因となっている可能性が最も高いビタミンはどれか。1つ選べ。
1 ビタミンB1
2 ビタミンB2
3 ビタミンB6
4 ビタミンB12
5 ビタミンE
問231(衛生)
この患者の症状の原因となっている可能性が最も高いビタミンに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 緑黄色野菜に多く含まれる。
2 アミノ基転移反応の補酵素として働く。
3 生体内でリン酸化されてから、糖質を代謝する酵素の補酵素として働く。
4 さらに欠乏すると、ペラグラ様皮膚炎を発症することがある。
5 多量に摂取しても尿中に排泄されるため、重篤な過剰症は特に知られていない。
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問230 解答 1
アルコールの代謝の一部はビタミンB1が関与しているため、慢性アルコール中毒者ではビタミンB1が欠乏し易い状態にある。本患者は、長期にわたるアルコール依存症と診断されているほか、食事が摂れず栄養不良の状態であることから、ビタミンB1が欠乏していると考えられる。また、眼球運動の異常やふらつき、意識障害が確認されていることから、ビタミンB1の欠乏によるウェルニッケ脳症が発現していると考えられる。
1 正
ビタミンB1の欠乏症として、脚気やウェルニッケ脳症が知られている。ウェルニッケ脳症では、眼球運動麻痺、運動障害、意識障害などが起こる。
2 誤
ビタミンB2の欠乏症として、皮膚炎、口内炎などが知られている。
3 誤
ビタミンB6の欠乏症として、舌炎、貧血、ペラグラ様症状などが知られている。
4 誤
ビタミンB12の欠乏症として、巨赤芽球性貧血などが知られている。
5 誤
ビタミンEの欠乏症は、ヒトではほとんどみられない。
問231 解答 3、5
本患者が欠乏していると考えられるビタミンB1は、生体内でリン酸化されることで活性型のチアミンピロリン酸(TPP)に変換され、糖代謝の補酵素として作用する。
1 誤
緑黄色野菜に多く含まれるのは、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンB2、葉酸である。ビタミンB1を多く含む食品には、豆類、豚肉、卵黄などがある。
2 誤
アミノ基転移酵素の補酵素として働くのは、ビタミンB6である。ビタミンB6は、生体内で活性型のピリドキサールリン酸に代謝され、アミノ酸代謝(アミノ基転移反応、アミノ酸脱炭酸反応など)に関与する。
3 正
前記参照
4 誤
欠乏によりペラグラ様皮膚炎を引き起こすことがあるのは、ビタミンB6である。
5 正
ビタミンB1は、水溶性ビタミンであり、多量に摂取しても尿中に排泄されるため、重篤な過剰症は特に知られていない。
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