薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 234,235
2月のインフルエンザが流行している時期に、6歳の娘が体調を崩したと母親が薬局を訪れた。患者は、咳が出て、38.0℃の熱があり、筋肉痛と倦怠感を訴えているとのことであった。
問234(実務)
薬局の薬剤師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 アスピリンを解熱鎮痛成分として含有する一般用医薬品を販売した。
2 インフルエンザの疑いがあるとして、医療機関への受診勧奨を行った。
3 半年前に近隣の医療機関から本人に処方された風邪薬を服用するように指導した。
4 筋肉痛を緩和するために、一般用医薬品のジクロフェナク貼付剤を販売した。
5 高熱が続くと脱水症状を起こすことがあるので、水分補給に努めるように指導した。
問235(衛生)
インフルエンザに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 インフルエンザウイルスはガーゼマスクの網目を容易に通過できる大きさであるが、その着用により飛沫の拡散を防ぐことができる。
2 インフルエンザは空気感染するので、手指を塩化ベンザルコニウム溶液で消毒しても予防できない。
3 新型インフルエンザウイルスは、毎年流行する季節性のウイルスとは抗原性が大きく異なり、ほとんどのヒトは抗体を持っていない。
4 高病原性鳥インフルエンザのH5N1型及びH7N9型は、いずれも感染症法*では二類感染症に分類されている。
5 新型インフルエンザの感染者は、感染症法*で原則入院と定められている。
*感染症法:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
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問234 解答 2、5
1 誤
本患者は、インフルエンザが流行している時期に、発熱、筋肉痛及び倦怠感を訴えているため、インフルエンザに罹患している可能性がある。インフルエンザに罹患している小児がアスピリンやジクロフェナクなどのNSAIDsを服用すると、ライ症候群という脳症を起こす可能性がある。そのため、アスピリンを含有する一般用医薬品を販売せずに、医療機関の受診を勧めることが適切である。
2 正
解説1参照
3 誤
半年前に医療機関から処方された風邪薬は、当時の患者の症状に合わせて処方されたものであり、症状が類似しているからといって同一の疾患であるとは限らない。そのため、改めて医療機関を受診するように指導する。
4 誤
ジクロフェナクは、アスピリン同様にライ症候群を引き起こす可能性があるため、医療機関の受診を勧める。(解説1参照)
5 正
高熱が続くと、発汗により体内の水分が奪われ、脱水症状を引き起こす。脱水症状はインフルエンザの症状を悪化させることがあるため、水やお茶、電解質を含む経口補水液などで水分補給をすることが望ましい。
問235 解答 2
1 正しい
インフルエンザウイルス自体はガーゼマスクの網目を容易に通過できる大きさであるが、唾液などの水分を含んだ飛沫はガーゼマスクの網目を通過できないため、ガーゼマスク着用によりインフルエンザの飛沫の拡散を防ぐことができる。
2 誤っている
インフルエンザの主な感染経路は、飛沫感染及び接触感染である。また、インフルエンザウイルスは、塩化ベンザルコニウム溶液で死滅するため、インフルエンザの接触感染を予防する手段として、手指を塩化ベンザルコニウム溶液で消毒することは有効である。
3 正しい
新型インフルエンザウイルスは、季節性のインフルエンザウイルスと抗原性が大きく異なるため、ほとんどの人が新型のウイルスに対する抗体を持っていない。ゆえに、新型インフルエンザ感染症は、世界的な大流行(パンデミック)となり、大きな健康被害とこれに伴う社会的影響をもたらすことが懸念されている。
4 正しい
高病原性鳥インフルエンザのH5N1及びH7N9型は、いずれも感染症法における二類感染症に分類され、その他の鳥インフルエンザは四類感染症に分類される。なお、インフルエンザは五類感染症に分類される。
5 正しい
感染症法において、新型インフルエンザ等感染症は原則入院の措置がとられる。
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