薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 248,249
62歳女性。毎日午前1時に就寝し、午前6時に起床する規則的な生活をしている。最近寝付きが悪い日が続いた。薬局で睡眠改善薬の一般用医薬品を購入して服用したが、改善されなかった。そこで専門医を受診し、すぐに眠れて朝すっきり起きられるような薬を希望し、睡眠薬が処方させることになった。
問248(実務)
処方される薬剤として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 アモバルビタール錠
2 スボレキサント錠
3 エスタゾラム錠
4 フルニトラゼパム錠
5 ゾルピデム酒石酸塩錠
問249(薬理)
前問の選択肢1〜5に挙げた薬物の作用機序に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 視床下部のヒスタミン作動性神経を抑制する。
2 大脳辺縁系に分布するγ-アミノ酪酸GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合し、GABAA受容体のGABAに対する親和性を高める。
3 視交叉上核に分布するメラトニン受容体を刺激する。
4 脳幹網様体に分布するγ-アミノ酪酸GABAA受容体のGABA結合部位に結合し、GABAA受容体の機能を亢進する。
5 オレキシン受容体を遮断することで脳内におけるモノアミン神経系を抑制する。
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問248 解答 5
不眠症は、入眠困難型と睡眠維持障害型(中途覚醒、早朝覚醒)に分類され、入眠困難型には消失半減期の短い睡眠薬、睡眠維持障害型には消失半減期の長い睡眠薬が推奨される。本患者は、「最近寝付きの悪い日が続いた」状態にあることから、入眠困難型であると考えられる。よって、本患者に処方される薬剤として最も適切なのは、消失半減期の短い睡眠薬である。
1 誤
アモバルビタールは、中時間型のバルビツール酸系睡眠薬であり、睡眠維持障害に用いられるため、本患者には適していない。アモバルビタールは、脳幹網様体に分布するγ-アミノ酪酸GABAA受容体のバルビツレート結合部位に結合し、GABAA受容体の機能を亢進することで催眠作用を示す。
2 誤
スボレキサントは、中時間型の睡眠薬であり、睡眠維持障害に用いられるため、本患者には適していない。スボレキサントは、オレキシン受容体を遮断することにより脳内におけるモノアミン神経系を抑制し、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させることで睡眠を誘発する。
3 誤
エスタゾラムは、中時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、睡眠維持障害に用いられるため、本患者には適していない。エスタゾラムは、大脳辺縁系に分布するγ-アミノ酪酸GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合し、GABAA受容体のGABAに対する親和性を高めることで催眠作用を示す。
4 誤
フルニトラゼパムは、中時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、睡眠維持障害に用いられるため、本患者には適していない。フルニトラゼパムは、大脳辺縁系に分布するγ-アミノ酪酸GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合し、GABAA受容体のGABAに対する親和性を高めることがある。
5 正
ゾルピデムは、超短時間型の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、入眠困難に用いられるため、本患者に適している。ゾルピデムは、大脳辺縁系に分布するγ-アミノ酪酸GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合し、GABAA受容体のGABAに対する親和性を高める。
問249 解答 2、5
1 誤
視床下部のヒスタミン作動性神経を抑制する薬物には、ヒスタミンH1受容体遮断薬であるジフェンヒドラミンなどがある。
2 正
大脳辺縁系に分布するγ-アミノ酪酸GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合し、GABAA受容体のGABAに対する親和性を高める薬物には、ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるエスタゾラムなど及び非ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるゾルピデムなどがある。
3 誤
視交叉上核に分布するメラトニン受容体を刺激する薬物には、ラメルテオンがある。
4 誤
このような作用機序を示す薬物は存在しない。なお、アモバルビタールなどのバルビツール酸系睡眠薬は、脳幹網様体に分布するγ-アミノ酪酸GABAA受容体のバルビツレート結合部位に結合し、GABAA受容体の機能を亢進することで催眠作用を示す。
5 正
オレキシン受容体を遮断することで脳内におけるモノアミン神経系を抑制する薬物には、スボレキサントがある。
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