薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 258,259
71歳男性。3年前に慢性閉塞性動脈硬化症と診断されたが、自覚症状は無く弾性靴下によるフットケアと運動療法を行っていた。最近、痛みと跛行が出てきたので、薬物療法も実施することとなった。患者は爪白癬治療のためイトラコナゾールを服用中である。
問258(実務)
この患者の治療薬として適切でないのはどれか。1つ選べ。
1 アルプロスタジル
2 ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩
3 サルポグレラート塩酸塩
4 チクロピジン塩酸塩
5 イコサペント酸エチル
問259(薬理)
前問の選択肢1〜5に挙げた薬物の作用機序に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 セロトニン5-HT1受容体を遮断する。
2 アンチトロンビン非依存的に血液凝固第Xa因子を抑制する。
3 トロンボキサンA2の産生を抑制する。
4 血小板におけるサイクリックAMP(cAMP)の分解を抑制する。
5 血小板におけるcAMPの産生を促進する。
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問258 解答 2
選択肢の薬物のうち、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩は、慢性閉塞性動脈硬化症に適応がないため、この患者の治療薬として適切ではない。ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩は、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制に用いられる。なお、その他の選択肢の薬物は、血管拡張作用や血小板凝集抑制作用を期待して、慢性閉塞性動脈硬化症に用いられる。
また、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩は、P−糖タンパク質阻害剤であるイトラコナゾールとの併用により、ダビガトランの血中濃度が上昇し出血の危険性が増大する恐れがあるため、両剤は併用禁忌である。このことからも、この患者の治療薬としては適切ではないと考えられる。
問259 解答 3、5
1 誤
前問の選択肢1〜5に挙げた薬物のうち、設問の作用機序に該当する薬物はない。なお、サルポグレラートは、セロトニン5−HT2受容体を遮断することで、セロトニンによる血小板凝集を抑制する。
2 誤
前問の選択肢1〜5に挙げた薬物のうち、設問の作用機序に該当する薬物はない。なお、ダビガトランは、アンチトロンビン非依存的にトロンビン(Ⅱa因子)を抑制する。
3 正
前問の選択肢1〜5に挙げた薬物のうち、設問の作用機序に該当するのはイコサペント酸エチルである。イコサペント酸エチルは、アラキドン酸代謝に拮抗することで血小板におけるトロンボキサンA2(TXA2)の産生を抑制する。
4 誤
前問の選択肢1〜5に挙げた薬物のうち、設問の作用機序に該当する薬物はない。なお、血小板におけるホスホジエステラーゼⅢを阻害して、サイクリックAMP(cAMP)の分解を抑制する血小板凝集抑制薬には、シロスタゾールなどがある。
5 正
前問の選択肢1〜5に挙げた薬物のうち、設問の作用機序に該当するのはアルプロスタジルやチクロピジンである。アルプロスタジルは、プロスタグランジンE1製剤であり、Gsタンパク質共役型受容体であるプロスタノイドEP受容体を刺激することで、アデニル酸シクラーゼを活性化し、血小板におけるcAMP産生を促進する。また、チクロピジンは、Giタンパク質共役型受容体であるP2Y12受容体を遮断することで、Giタンパク質によるアデニル酸シクラーゼに対する抑制を解除し、血小板におけるcAMP産生を促進する。
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