薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 288,289
68歳男性。体重60 kg。高血圧症及び便秘のため下記の処方薬を服用していた。患者は日中に町内会の夏祭りの準備をしており、水分摂取を忘れるほど夢中に作業をしたところ、体調不良となり救急搬送された。救急搬送時の体温は38.5℃。血液検査で、血清クレアチニン値が前回受診時の0.8 mg/dLから2.5 mg/dLへと上昇しており、急性腎不全の診断となった。
問288(実務)
この患者の薬学的管理に関する提案のうち、適切でないのはどれか。2つ選べ。
1 ロキソプロフェンナトリウム水和物錠の投与
2 酸化マグネシウム錠の中止
3 エナラプリルマレイン酸塩錠の中止
4 トリクロルメチアジド錠の中止
5 レボフロキサシン水和物錠の投与
問289(病態・薬物治療)
急性腎不全の病態と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 不可逆的に腎機能が低下する。
2 低カリウム血症が起こる。
3 腎前性の場合は尿中ナトリウム低値を伴う乏尿が起こる。
4 ビタミンD活性化障害により腎性貧血が認められる。
5 脱水は急性腎不全の危険因子である。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問288 解答 1、5
本患者は、水分摂取を忘れて暑い状況下で作業をしており、体調不良、体温38.5℃の高熱、血清クレアチニン値が2.5 mg/dLに上昇していることから、熱中症に伴う脱水症状による急性腎前性腎不全を発症していると考えられる。
1 不適切
ロキソプロフェンナトリウムなどのNSAIDは、腎血流量を低下させることにより、腎不全症状を悪化させるおそれがあるため、本患者に投与すべきではない。
2 適切
酸化マグネシウムを腎不全患者に投与すると、酸化マグネシウムの排泄低下により高マグネシウム血症を起こすおそれがあるため、本患者への投与は中止すべきである。
3 適切
エナラプリルマレイン酸塩などのACE阻害薬は、腎血流量を低下させることにより、腎不全症状を悪化させるおそれがあるため、本患者への投与は中止すべきである。
4 適切
トリクロルメチアジドなどの利尿薬は、循環血流量を低下させることにより、腎前性腎不全症状を悪化させるおそれがあるため、本患者への投与は中止すべきである。
5 不適切
本患者の発熱は、脱水により発汗が低下し、汗による気化ができず体温調節ができなくなる熱中症によるものである。そのため、感染症による発熱とは考えにくいため、レボフロキサシン水和物錠などの抗菌薬の投与はするべきではない。
問289 解答 3、5
本患者は、水分摂取を忘れて暑い状況下で作業をしており、体調不良、体温38.5℃の高熱、血清クレアチニン値が2.5 mg/dLに上昇していることから、熱中症に伴う脱水症状により、急性腎前性腎不全を発症していると考えられる。
1 誤
急性腎不全は、可逆的に腎機能が低下している状態であり、適切な治療により腎機能を回復することができる。
2 誤
急性腎不全では、尿細管におけるカリウムの排泄低下により、高カリウム血症が起こる。
3 正
腎前性腎不全では、腎血流量の低下を補うために、尿中でのナトリウムおよび水の再吸収が亢進し、尿中ナトリウム低値を伴う乏尿が起こる。
4 誤
急性腎不全では、ビタミンD活性化障害により、消化管からのカルシウムの吸収が低下することで骨病変が認められる。なお、急性腎不全における腎性貧血は、腎臓でのエリスロポエチン産生低下によるものである。
5 正
脱水や出血、心不全などで腎血流量が低下することによる糸球体ろ過量の低下が、急性腎前性腎不全の危険因子となる。
-
解説動画1 ( 18:42 )
-
※ この解説動画は 60 秒まで再生可能です
再生速度
|
|
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿