薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 300,301
70歳女性。3日前から全身倦怠感、前日から38℃台の発熱があった。起床時に立ち上がることができなかったため、救急搬送された。
搬送時の検査データ: 意識やや混濁、血圧82/56 mmHg、心拍数105 bpm、呼吸数23回/min、酸素飽和度93%、体温38.6℃、左肋骨脊柱角に叩打痛あり、白血球数16,500 /µL、CRP 20.8 mg/dL、BUN 41.5 mg/dL、Cr 2.3 mg/dL
尿のグラム染色では、大腸菌を疑わせるグラム陰性桿菌を多数認めた。
救急外来でブドウ糖加乳酸リンゲル液の点滴を行ったところ、意識状態、血圧、心拍数に改善が認められた。この時点で、抗菌薬を投与することとなった。
問300(実務)
薬剤師が推奨すべき抗菌薬として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 ベンジルペニシリンカリウム
2 セフトリアキソンナトリウム
3 ダプトマイシン
4 エリスロマイシンラクトビオン酸塩
5 リネゾリド
問301(病態・薬物治療)
本患者は敗血症と診断された。本患者の病態及び薬物治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 敗血症では白血球が減少することはない。
2 敗血症は、症状と血液検査で疑い、血液培養を行い、病因診断を行う。
3 患者の治療を優先するために、抗菌薬投与後に血液培養を行う。
4 発熱は十分な輸液により改善する。
5 治療後には腎機能の改善を認める。
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問300 解答 2
本患者は、尿のグラム染色において大腸菌を疑わせるグラム陰性桿菌を多数認め、さらに左肋骨脊柱角の叩打痛や、BUNおよびCrの上昇(基準値:BUN 20 mg/dL以下・Cr 1.3 mg/dL以下)、38℃台の発熱などを認めることから、腎盂腎炎を発症していると考えられる。さらに、意識混濁、血圧低下、頻脈、呼吸促迫(基準値:22回/min以下)などの全身症状まで見られることから、敗血症を引き起こしていると診断されている。
敗血症の治療として、抗菌薬の投与を行う必要があり、本選択肢の中で大腸菌に対しての抗菌スペクトラムを持ち、かつ腎移行性の高い抗菌薬は、セフトリアキソンナトリウムのみである。
問301 解答 2、5
敗血症は、感染症に対する制御不能な宿主反応によって引き起こされる生命を脅かすような臓器障害であり、必ずしも典型的な臨床像を呈するものではなく、①高熱または低体温、②頻脈、呼吸促迫、③著明な全身倦怠感、④全身の関節痛や筋肉痛、⑤血圧低下、⑥白血球増加もしくは著明な減少、⑦血小板減少など様々な症状がみられる。
1 誤
本患者は白血球数16,500 /µL(基準値:4,000 /µL〜9,000 /µL)であり白血球増加が起こっているが、白血球が減少する症例もある。(前記参照)
2 正
敗血症は、症状と血液検査で疑い、原因菌同定には抗菌薬投与前に必ず血液培養検査(可能な限り異なる部位の静脈から2セット採血する)を行う。原因菌が同定できたら、疑わしい臓器全てに移行でき、推定される原因菌をカバーしうる抗菌薬を経静脈的かつ速やかに投与する。
3 誤
抗菌薬投与後に血液培養を行うと、菌の死滅等で検出感度が低下するため、必ず抗菌薬投与前に血液培養を行う。
4 誤
敗血症における発熱に対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)やアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬を用いる。ただし、敗血症において解熱の対処を行うことは少ない。
5 正
本症例において、敗血症の全身症状が改善し腎血流が改善すれば、腎機能の回復は可能である。
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