薬剤師国家試験 平成30年度 第103回 - 一般 実践問題 - 問 324,325
85歳女性。独居。かかりつけ医を受診し、処方せんを持って薬局を訪れた。薬剤を受け取って帰宅後にこの女性から薬局に電話があり、「薬を飲んだあと首のまわりが赤くなってきた」とのことだった。
問324(実務)
薬剤師が行う対応として、優先度が高いのはどれか。2つ選べ。
1 市販の湿疹用軟膏の手持ちがあれば使用するよう助言する。
2 息苦しさや唇の腫れなどいつもと違う感じがないか確認する。
3 不安に対し時間をかけてカウンセリングを行う。
4 明日まで様子を見るよう助言をする。
5 副作用以外の可能性を探るための質問をする。
問325(法規・制度・倫理)
この患者が、この電話対応から2週間後に来局したとき、相談する相手もなく心細い様子だった。この患者への対応として、適切でないのはどれか。2つ選べ。
1 患者の気持ちを共感的に受け止める。
2 患者の話を要約して伝えることにより、互いの理解を確認する。
3 患者に同情して、薬剤師自身の体験を一方的に話す。
4 患者が聞きやすい声の高さや大きさに配慮する。
5 患者が自由に話しやすいように、閉じた質問をする。
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問324 解答 2、5
患者から副作用が疑われる症状の訴えがある場合、緊急性が高い症状かどうか、原疾患に由来する症状かどうか、重大な副作用の初期症状かどうかを判断することが優先される。本患者は「薬を飲んだあと首のまわりが赤くなってきた」と訴えていることから、服用薬によるアナフィラキシーの可能性を考慮しながら適切な対応をとる必要がある。
1 誤
本問のように電話で対応する場合は、患者からの情報(使用した医薬品名、症状の程度、原疾患等)が正確に伝わらないことがあるため、安易にOTC医薬品等で対応することは適切ではない。
2 正
アナフィラキシーの場合、皮膚・粘膜症状や呼吸器症状(他にも循環器症状や持続する消化器症状等)が発現するため、息苦しさや唇の腫れなどいつもと違う感じがないか確認することは、優先度が高い。
3 誤
不安に対してカウンセリングを行うことは、薬剤師として重要な職務の一つであるが、緊急性が高い症状の場合は、すぐに受診勧奨を行う必要があるため、この場合、時間をかけてカウンセリングを行うことは適切ではない。
4 誤
緊急性が高い症状の場合は、すぐに受診勧奨を行う必要があるため、明日まで様子を見るよう助言をすることは適切ではない。
5 正
本症状の原因が、服用薬以外(原疾患の悪化、食物アレルギー等)の可能性も否定できないため、副作用以外の可能性を探るための質問をすることは優先度が高い。
問325 解答 3、5
1 適切
相談する相手もなく心細い様子から、本患者の不安な気持ちが感じ取れる。この不安な気持ちを共感的に受け止めることは、患者の事を配慮した適切な対応である。
2 適切
患者の話を要約して伝えることは、互いの理解を確認できるだけでなく、患者が自身のことを理解されていると感じることによる信頼関係の構築にもつながるため、患者の事を配慮した適切な対応である。
3 不適切
患者に同情して、薬剤師自身の体験を話すことは適切であるが、薬剤師が一方的に話すことは、患者に対する配慮に欠けるため、適切な対応とはいえない。
4 適切
声が大きすぎると相手に威圧感を与え、声が小さすぎると相手に頼りない印象を与え、どちらにしても患者を不安にしてしまう可能性があるため、声の高さや大きさに気をつけることは、患者の事を配慮した適切な対応である。
5 不適切
閉じた質問とは、「はい、いいえ」等で答える質問であり、閉じた質問をされた患者は自由に話すことが難しくなる。このため、患者が自由に話しやすいようにと配慮した上で閉じた質問をすることは適切な対応とはいえない。なお、患者が自由に話しやすい質問は開いた質問である。
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