薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 理論問題 - 問 171
コロイド分散系の性質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 疎水コロイドの安定性は、粒子間のファンデルワールス引力と静電反発力の総和で評価できる。
2 疎水コロイドに電解質が共存すると粒子表面の電気二重層は厚くなり、分散状態は不安定となる。
3 疎水コロイドの電荷と反対符号のイオンの価数が大きくなるほど、凝析価(mol/L)は大きくなる。
4 親水コロイドに対する同濃度の1価陽イオンの塩析作用の強さは、K+>Na+>Li+である。
5 親水性の高分子コロイドにアルコールを添加すると、コロイドに富む液相と乏しい液相の2つに分離するコアセルベーションが起こる。
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解答 1、5
1 正
コロイド粒子間には、粒子間のファンデルワールス引力VAと静電反発力VRが働いている。粒子間に引力と反発力という相反する力が同時に働く場合、疎水コロイド粒子間に働く総相互ポテンシャルエネルギーVTは、ファンデルワールス力VA(負の値)と静電反発力VR(正の値)の総和として表される(VT=VR+VA)。これをDLVO 理論といい、疎水コロイドの安定性に関する理論である。
2 誤
疎水コロイドは、溶液中で粒子表面の電気二重層の電荷による静電反発力によって分散している。疎水コロイドに電解質が共存すると粒子表面の電気二重層の電荷が中和され電気二重層は薄くなり、静電反発力が低下する。その結果、コロイド同士が凝集(凝析)しやすくなり分散状態は不安定となる。
3 誤
凝析価(mol/L)とは、疎水コロイドを凝析するのに要する電解質の最小濃度のことであり、凝析価が小さい電解質ほど凝析力は大きい。また、凝析価の大きさは、イオンの価数の約6乗に反比例する(シュルツ・ハーディの法則)。したがって、疎水コロイドの電荷と反対符号のイオンの価数が大きくなるほど、凝析価(mol/L)は小さくなる。
4 誤
親水コロイドは、電気二重層に加えて水和層が存在するため安定であり多量の電解質を添加することで凝集(塩析)が起こる。電解質の塩析作用強さはホフマイスター順列で表すことができ、同濃度の1価陽イオンの塩析作用の強さは、Li+>Na+>K+>Rb+>Cs+である。なお、2価陽イオンは、Mg2+>Ca2+>Sr2+>Ba2+、1価の陰イオンは、F->Cl->Br->NO3->I->SCN-である。
5 正
親水性の高分子コロイドにアルコールなどの脱水剤を添加すると、コロイド粒子同士が凝集しコロイドに富む液相と乏しい液相の2つに分離するコアセルベーションが起こる。
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