薬剤師国家試験 平成31年度 第104回 - 一般 実践問題 - 問 300,301
50歳男性。身長175 cm、体重80 kg、血清クレアチニン1.5 mg/dL。眼内炎、遷延する発熱、中心静脈カテーテル刺入部位の発赤及び圧痛があり、中心静脈カテーテル刺入部関連感染の疑いと診断された。細菌感染に対する抗菌療法に反応せず、カテーテル刺入部の膿、末梢血培養で真菌陽性、血液検査でβ−D−グルカン陽性のため、カテーテルを抜去し、ホスフルコナゾールによる治療を開始したが、治療反応性が悪かった。その後、刺入部位膿と血液の培養の結果、Candida krusei(カンジダ属真菌)が検出された。
問300(病態・薬物治療)
この患者の真菌感染症に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 表在性真菌感染症である。
2 ST(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)合剤が有効である。
3 日和見感染症と考えられる。
4 鳥類の糞便中で増殖したものが、感染源となった可能性が高い。
5 侵襲性カンジタ症の1つである。
問301(実務)
本症例に対して、アムホテリシンBリポソーム製剤を静脈内投与することとした。この薬剤の投与に関して適切なのはどれか。2つ選べ。
1 溶解液を加えて振とうし、沈殿物が認められた場合は、添付のフィルターでろ過する。
2 添付のフィルターは、アルコールで消毒すれば再使用できる。
3 15分以内で静脈内に点滴投与する。
4 投与中あるいは投与後に発熱、悪寒、悪心等が発現しないかを観察する。
5 投与期間中は、腎機能を定期的にモニターする。
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問300 解答 3、5
1 誤
本患者は中心静脈カテーテル留置によりカンジダ血症を発症したと考えられる。カンジダ血症は、皮膚や粘膜を侵す表在性真菌感染症ではなく、深部臓器を侵す深在性真菌感染症に該当する。
2 誤
ST(スルファメトキサゾール・トリメトプリル)合剤は、ニューモシスチス肺炎に適応される。カンジダ真菌症にはキャンディン系、ボリコナゾール、アムホテリシンBが用いられる。
3 正
深在性真菌症は、免疫抑制薬が投与されている患者、糖尿病などの基礎疾患をもつ患者やAIDS患者など、易感染性宿主に日和見感染症として発症する。
4 誤
鳥類の排泄物が感染源となる可能性が高い真菌感染症は、クリプトコッカス症である。
5 正
侵襲性カンジダ症とは、侵入門戸からカンジダが全身に広がり、発熱や臓器障害といった全身症状をきたす疾患である。本患者は中心静脈カテーテル刺入部を侵入門戸とし、全身症状である発熱をきたしていることから、侵襲性カンジダ症であると判断できる。
問301 解答 4、5
1 誤
アムホテリシンBリポソーム製剤は溶けにくいため、注射用水注入後、直ちに振とうし、均一な黄色の半透明の液になるまで激しく振り混ぜる。その後、溶解状態を目視で確認し、溶け残りの小さな塊を認めた場合は、完全に溶解するまでさらに振とうを続ける必要がある。
2 誤
アムホテリシンBリポソーム製剤添付のフィルターは1回限りの使用で再利用はできない。また、アルコールを含む消毒剤を使用すると接続部分にひび割れを生じる可能性があるため、使用してはならない。
3 誤
アムホテリシンBリポソーム製剤は、注入時間が長くなると投与時関連反応の発現率が低くなる傾向があるため、1〜2時間以上かけて点滴静注することとされている。
4 正
アムホテリシンBリポソーム製剤投与中に、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少が現れることがあるため、定期的に血液検査を実施するなど観察を十分行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う必要がある。
5 正
アムホテリシンBリポソーム製剤投与中に腎障害が現れることが報告されているため、定期的に腎機能の検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量、休薬等適切な処置を行う必要がある。
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