薬剤師国家試験令和02年度第105回 - 一般理論問題 - 問 178

乳剤A、B及びCはそれぞれ図に示す容積の水と油からなっている。これらの乳剤には非電解質の薬物1,000 mgが溶解している。25℃における乳剤A〜Cの油相及び水相中の薬物濃度に関する記述のうち、最も適切なのはどれか。１つ選べ。ただし、25℃における薬物の油／水分配係数は1,000であり、分配平衡に達しているものとする。また、溶解に伴う容積変化は無視でき、両相において薬物は会合しないものとする。

１　乳剤AとBの油相中の薬物濃度は、ほぼ等しい。
２　乳剤AとCの油相中の薬物濃度は、ほぼ等しい。
３　乳剤BとCの油相中の薬物濃度は、ほぼ等しい。
４　乳剤Aの水相中の薬物濃度は、乳剤Bの水相中の薬物濃度のほぼ半分である。
５　乳剤Bの水相中の薬物濃度は、乳剤Cの水相中の薬物濃度のほぼ半分である。

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解答　３

一定温度、圧力のもと、互いに混合しない二相間で、平衡に達すると油相と水相に一定の割合で物質が分配する。各相の溶質の分子形濃度をC油、C水とすれば油／水分配係数K（P O/W）は、以下の式で表される。

乳剤A〜Cには、非電解質の薬物1,000 mgが溶解しており、油／水分配係数K（P O/W）が1,000の場合、それぞれの油相中と水相中の濃度は以下のとおりである。
　
乳剤Aの場合
分配平衡時における、油相中の薬物濃度をx mgとおくと、水相中の薬物濃度は1000－x mgとなる。それぞれの容積（油相10 mL、水相100 mL）から、油相の薬物濃度はx mg/10 mL、水相の薬物濃度は1000－x mg/100 mLとなる。油／水分配係数K（P O/W）の式より、油相中の薬物濃度と水相中の薬物濃度は以下のように求められる。

x≒990.1 mg
油相中の薬物濃度＝990.1 mg/10 mL＝99.01 mg/mL
水相中の薬物濃度＝9.9 mg/100 mL＝0.099 mg/mL

乳剤Bの場合
分配平衡時における、油相中の薬物濃度をy mgとおくと、水相中の薬物濃度は1000－x mgとなる。それぞれの容積（油相20 mL、水相100 mL）から、油相の薬物濃度はy mg/20 mL、水相の薬物濃度は1000－y mg/100 mLとなる。油／水分配係数K（P O/W）の式より、油相中の薬物濃度と水相中の薬物濃度は以下のように求められる。

y≒995 mg
油相中の薬物濃度＝995 mg /20 mL＝49.75 mg/mL
水相中の薬物濃度＝5 mg/100 mL＝0.05 mg/mL

乳剤Cの場合
分配平衡時における、油相中の薬物濃度をz mgとおくと、水相中の薬物濃度は1000－z mgとなる。それぞれの容積（油相20 mL、水相200 mL）から、油相の薬物濃度はz mg/20 mL、水相の薬物濃度は1000－z mg/200 mLとなる。油／水分配係数K（P O/W）の式より、油相中の薬物濃度と水相中の薬物濃度は以下のように求められる。

z≒990.1 mg
油相中の薬物濃度＝990.1 mg /20 mL＝49.505 mg/mL
水相中の薬物濃度＝9.9 mg /200 mL＝0.0495 mg/mL

１　誤
乳剤Aの油相中の薬物濃度（99.01 mg/mL）と乳剤Bの油相中の薬物濃度（49.75 mg/mL）は異なる。

２　誤
乳剤Aの油相中の薬物濃度（99.01 mg/mL）と乳剤Cの油相中の薬物濃度（49.505 mg/mL）は異なる。

３　正
乳剤Bの油相中の薬物濃度（49.75 mg/mL）と乳剤Cの油相中の薬物濃度（49.505 mg/mL）はほぼ等しい。

４　誤
乳剤Aの水相中の薬物濃度（0.099 mg/mL）は、乳剤Bの水相中の薬物濃度（0.05 mg/mL）のほぼ2倍である。

５　誤
乳剤Bの水相中の薬物濃度（0.05 mg/mL）は、乳剤Cの水相中の薬物濃度（0.0495 mg/mL）とほぼ等しい。