薬剤師国家試験 令和02年度 第105回 - 一般 実践問題 - 問 246,247
30歳女性。少し前から物が二重に見えることがあり、最近は階段を上るときに下肢のだるさを感じるようになった。また、夜は歯磨き程度でも腕が疲れるようになったため受診した。早期の重症筋無力症と診断され、以下の薬剤が処方された。
問246(実務)
この患者の処方に関する記述のうち適切なのはどれか。2つ選べ。
1 処方1は疾患の根治を目的として処方されている。
2 処方1の発現頻度の高い注意すべき副作用として腹痛がある。
3 処方2の重大な副作用として低血糖がある。
4 処方3は、血清カリウム値を低下させる薬物との併用は禁忌である。
5 処方3を服用中は、感染症対策としての乾燥弱毒生風しんワクチンの接種は勧められない。
問247(薬理)
処方薬の服用により、症状の改善がみられたが、帯状疱疹を発症するとともに、下痢が顕著になった。帯状疱疹と下痢の発症のそれぞれに関係する薬物の作用機序として最も適切なのはどれか。2つ選べ。
1 コリンエステラーゼ阻害作用
2 カルシニューリン阻害作用
3 糖新生促進作用及び糖利用抑制作用
4 脂肪酸分解促進作用及び脂肪産生促進作用
5 IL−2(インターロイキン−2)受容体遮断作用
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問246 解答 2、5
重症筋無力症は、ニコチン性アセチルコリン受容体に対する自己抗体が産生される自己免疫疾患であり、骨格筋の神経筋接合部における神経伝達が障害されることで筋力低下を引き起こす。初期症状として外眼筋の筋力低下による眼瞼下垂や複視(両目で見ると物が二重に見える)がみられ、全身の筋肉に筋力低下が及ぶと嚥下障害、歩行障害などもみられ、重症例では呼吸筋麻痺による呼吸困難を起こすこともある。重症筋無力症の治療には、コリンエステラーゼ阻害薬や副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬などが用いられる。
1 誤
重症筋無力症の根治は難しく、治療薬は基本的に対症療法を目的に用いられている。
2 正
ピリドスチグミンは、アセチルコリン(ACh)の分解酵素であるコリンエステラーゼを阻害することにより、シナプス間隙のACh濃度を上昇させるとともに、ニコチン性アセチルコリンNM受容体刺激作用をもつため、重症筋無力症の治療に用いられる。なお、本剤は副作用として、AChの作用を間接的に増強させることに伴う副交感神経興奮様作用により、下痢、腹痛などの消化器症状がみられることが多いため、注意が必要である。
3 誤
プレドニゾロンは、合成副腎皮質ステロイド性薬であり、重大な副作用として高血糖に基づく糖尿病を引き起こす恐れがあり注意が必要である。
4 誤
タクロリムスは、副作用として高カリウム血症を発現させる恐れがあり、血清カリウム値を上昇させるスピロノラクトンなどのカリウム保持性利尿薬との併用は禁忌である。
5 正
タクロリムスは、免疫抑制剤であり、服用中の生ワクチンの投与は症状を発症してしまう恐れがあるため、乾燥弱毒生風しんワクチンなどの生ワクチンとの併用は禁忌である。
問247 解答 1、2
帯状疱疹は、免疫抑制作用をもつカリシニューリン阻害薬であるタクロリムス及び副腎皮質ステロイド性薬の副作用であると考えられ、下痢などの消化器症状はコリンエステラーゼ阻害薬であるピリドスチグミンの副作用であると考えられる。
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