薬剤師国家試験 令和02年度 第105回 - 必須問題 - 問 5
混合物中の一つの成分の化学ポテンシャルは、圧力と温度が一定の条件下、混合物中にその成分を1 mol加えたときの、系全体の の変化量として定義される。 にあてはまる熱力学量はどれか。1つ選べ。
1 内部エネルギー
2 エンタルピー
3 エントロピー
4 ギブズエネルギー
5 ヘルムホルツエネルギー
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解答 4
化学ポテンシャルµとは、圧力と温度が一定の条件下、混合物中にその成分を1 mol加えたときの、系全体のギブズエネルギー(G )の変化量である。また、ギブズエネルギーとは、系の自発性に関わる熱力学関数で、定温定圧過程において用いられ、以下の式で表される。
G=H-T・S
T:絶対温度
ギブズエネルギーが小さいほど熱力学的に安定であるといえる。そのため、定温定圧で系の反応が自発的に進行するとき、系のギブズエネルギーは減少し(ΔG<0)、系の反応が平衡状態であれば、ギブズエネルギーは一定となる(ΔG=0)。
1 誤
内部エネルギーUとは、系を構築している原子や分子の運動エネルギー(振動、回転、並進)や、相互の位置関係に基づく位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)のほか、原子や分子を構築している陽子、中性子、電子の運動エネルギーとポテンシャルエネルギーを含めた系のもつ全エネルギーのことである。熱力学第一法則によれば、内部エネルギーの絶対量は必要なく、変化量ΔUが重要であるとなっている。内部エネルギーの変化量ΔUは以下の式で表される。
ΔU=q+w(=q-PΔV )
q:熱量、w:仕事、P:圧力、ΔV:体積変化
2 誤
エンタルピーHとは、熱含量を示し、以下の式で表される。
H=U+P・V
エンタルピーの変化量ΔHにより、化学反応における熱エネルギーの放出または吸収の判断をすることができる。ΔHが負であれば熱エネルギーの放出を伴う発熱反応であり、ΔHが正であれば熱エネルギーの吸収を伴う吸熱反応を示す。
3 誤
エントロピーSとは、系の乱雑さを表す尺度である。物質やエネルギーの乱雑さが増大すればエントロピーは増大し、乱雑さが減少すればエントロピーは減少する。
4 正
前記参照
5 誤
ヘルムホルツエネルギーは、ギブズエネルギーと同様に系の性質を表す状態関数であり、ギブズエネルギーを定温定容過程に置き換えた熱力学的関数である。
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