薬剤師国家試験 令和02年度 第105回 - 一般 理論問題 - 問 92
酢酸亜鉛は、ウィルソン病や低亜鉛血症の治療薬として用いられているが、副作用として銅欠乏症を生じる場合がある。亜鉛化合物の定量には一般にキレート滴定法が用いられる。日本薬局方において、酸化亜鉛(ZnO:81.38)の定量法は以下のように規定されている。この定量法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
本品を850℃で1時間強熱し、その約0.8 gを精密に量り、水2 mL及び塩酸3 mLに溶かし、水を加えて正確に100 mLとする。この液10 mLを正確に量り、水80 mLを加え、水酸化ナトリウム溶液(1→50)をわずかに①沈殿を生じるまで加え、次に②pH10.7のアンモニア・塩化アンモニウム緩衝液5 mLを加えた後、0.05 mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液で滴定する(指示薬: ア 0.04 g)
0.05 mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液1 mL= イ mg ZnO
1 下線部①の沈殿は水酸化亜鉛(Zn(OH)2)である。
2 下線部②の操作は、エチレンジアミン四酢酸と金属の錯体を作りやすくするために行う。
3 ア は、クリスタルバイオレットである。
4 滴定終点において、指示薬 ア がエチレンジアミン四酢酸と結合して変色する。
5 イ に入る数値は2.035である。
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解答 1、2
1 正
酸化亜鉛(ZnO)の水溶液に、少量の水酸化ナトリウム溶液を加えると、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)の白色沈殿を生じる。
2 正
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の構造は下図の通りであり、2つの窒素原子と4つのカルボキシ基が配位子として働く。ただし、カルボキシ基が配位子として働くためには、−COO-となる必要があるため、アンモニア・塩化アンモニウム緩衝液を用いて塩基性にすることで、EDTAのカルボキシ基のH+の解離を起こりやすくして、4つのカルボキシ基も配位子として働けるようにすることで、金属と錯体を作りやすくしている。
3 誤
本滴定の指示薬アは、エリオクロムブラックT・塩化ナトリウム指示薬である。なお、クリスタルバイオレットは、主に非水滴定で用いられる指示薬である。
4 誤
本滴定では、指示薬が金属イオンとキレートを形成した時の色(赤色)とキレートを形成していない時の色(青色)の違いを終点の検出に利用している。指示薬をあらかじめZn2+とキレートを形成させ溶液を赤色としておき、EDTAを滴下する。滴定終点では、EDTAが指示薬と結合していたZn2+を全て奪うため、指示薬がキレートを形成していない状態となり青色となる。
5 誤
EDTAはZn2+のような2価以上の金属イオンと1:1で反応する。0.05 mol/LのEDTA液1 mLは、EDTAを0.05 mmol含むため、酢酸亜鉛(ZnO)0.05 mmolと反応する。酢酸亜鉛(ZnO)の分子量は81.38なので、イに入る数値は、0.05 mmol × 81.38 g/mol=4.069 mgとなる。
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