薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 理論問題 - 問 160,161
問160〜161
53歳男性。身長170 cm、体重90 kg。喫煙歴あり(15本/日)、機会飲酒。数年前から健康診断で血圧が高いことを指摘され、本人も自覚していたが放置していた。最近、軽度のめまい感が頻発するので受診した。来院時の血圧は150/95 mmHg、心電図検査の胸部誘導でSV1+RV5=4.0 mV。胸部X線検査で心胸郭比(CTR)56%。血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度、血中カテコールアミン濃度はいずれも正常、HbA1c5.8%(NGSP値)、TG(トリグリセリド)140 mg/dL、LDL−C160 mg/dL、HDL−C40 mg/dL、尿タンパク(-)であった。2回目の受診時にシルニジピンとフルバスタチンによる治療が開始された。
問160(薬理)
シルニジピンに関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。
1 アンジオテンシンⅡAT1受容体を遮断して、血圧を低下させる。
2 N型Ca2+チャネルを遮断して、交感神経終末からのノルアドレナリンの遊離を抑制する。
3 L型Ca2+チャネルを遮断して、血管平滑筋を弛緩させる。
4 アドレナリンα1受容体を遮断して、末梢血管抵抗を低下させる。
5 アドレナリンβ1受容体を遮断して、レニン分泌を抑制する。
問161(病態・薬物治療)
この患者の病態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 家庭では、血圧が正常である。
2 脂質異常症による二次性高血圧である。
3 病態の改善には肥満度を下げることが推奨される。
4 病態の改善にはカリウム制限を厳密に行う必要がある。
5 心肥大がある。
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問160 解答 2、3
シルニジピンは、ジヒドロピリジン系Ca2+チャネル遮断薬であり、血管平滑筋に存在するL型Ca2+チャネルを遮断して血管平滑筋を弛緩させるとともに、交感神経終末に存在するN型Ca2+チャネルを遮断してノルアドレナリン遊離を抑制する。その他のジヒドロピリジン系薬と比べ、N型Ca2+チャネルの遮断作用を有するため、血管平滑筋に存在するL型Ca2+チャネル遮断による降圧作用に伴う反射性心拍数増加反応が起こりにくい。なお、アンジオテンシンⅡAT1受容体を遮断するのはロサルタン、アドレナリンα1受容体を遮断するのはプラゾシン、アドレナリンβ1受容体を遮断するのはアテノロールなどである。
問161 解答 3、5
1 誤
高血圧の診断基準として、診察室における収縮期血圧140 mmHg以上又は拡張期血圧90 mmHg以上の場合は高血圧と診断される(自宅で測定する家庭血圧の場合は、診察室血圧より5 mmHg低い基準が用いられる)。1回目の受診時、診察室血圧が150/95 mmHgであること、2回目の受診時に降圧薬シルニジピンが処方されていることなどから、本患者は家庭血圧も高血圧であると推測される。
2 誤
年齢、体重、飲酒歴等の背景や、血圧上昇に関わる血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度、血中カテコールアミンなどのホルモン濃度がいずれも正常であることから考えて、本患者は二次性高血圧ではなく、本態性高血圧であると推測される。なお、二次性高血圧の原因として、腎障害や褐色細胞腫、原発性アルドステロン症やクッシング症候群などの内分泌系疾患があげられる。
3 正
身長170 cm、体重90 kgの数値よりBMIは約31.1(90 kg/(1.7 m)2)であり、25を超えているため本患者は肥満である。肥満は高血圧患者の予後悪化の危険因子であるため、肥満度を下げることが推奨される。
4 誤
本態性高血圧の病態の改善に必要なイオンコントロールは、減塩によるナトリウム制限である。なお、カリウムの摂取は腎臓でのナトリウムの排泄を促進するため、むしろ摂取が推奨される。
5 正
本患者は心胸郭比(CTR)が56%(基準値:50%未満)と高値を示している。また、心電図検査の胸部誘導におけるSV1+RV5は左室肥大の診断に用いられ、こちらも4.0 mV(基準値:3.5 mV未満)と高値を示している。以上の点から、本患者は心肥大があると判断される。
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