薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 理論問題 - 問 173
体内動態が線形性を示す薬物Aは、肝代謝と腎排泄によって体内から消失し、正常時における腎クリアランスは全身クリアランスの60%である。また、腎疾患時に薬物Aの肝クリアランスは変化しないが、腎クリアランスは糸球体ろ過速度(GFR)に比例して変化する。薬物Aを投与中の患者において、GFRが正常時の50%に低下したとする。薬物Aの血中濃度時間曲線下面積(AUC)を腎機能正常時と同じにするには、投与量を腎機能正常時の何%に変更すればよいか。1つ選べ。
1 20
2 40
3 70
4 140
5 250
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解答 3
設問文に「体内動態が線形性を示す薬物Aは、肝代謝と腎排泄によって体内から消失し、正常時における腎クリアランスは全身クリアランスの60%である」とあることから薬物Aの正常時における腎クリアランスは全身クリアランスの60%、肝クリアランスは全身クリアランスの40%であるといえる。
CL腎(正常)=0.6 CLtot(正常)
CL肝(正常)=0.4 CLtot(正常)
CLtot(正常):腎機能正常時の全身クリアランス
CL肝(正常):腎機能正常時の肝クリアランス
CL腎(正常):腎機能正常時の腎クリアランス
また、「腎疾患時に薬物Aの肝クリアランスは変化しないが、腎クリアランスは糸球体ろ過速度(GFR)に比例して変化する。」とあることから、GFRが正常時の50%に低下した場合の患者の全身クリアランスは、以下のように求めることができる。
CL肝(腎疾患)=CL肝(正常)=0.4 CLtot(正常)
CL腎(腎疾患)=0.6 CLtot(正常)×0.5=0.3 CLtot(正常)
CLtot(腎疾患)=CL肝(腎疾患)+CL腎(腎疾患)=0.4 CLtot(正常)+0.3 CLtot(正常)=0.7 CLtot(正常)
CLtot(腎疾患):腎疾患時の全身クリアランス
CL肝(腎疾患):腎疾患時の肝クリアランス
CL腎(腎疾患):腎疾患時の腎クリアランス
体内動態が線形性を示す場合、血中濃度時間曲線下面積(AUC)は①式で表すことができる
CLtot:全身クリアランス
X0:体内薬物移行量
①式より、血中濃度時間曲線下面積は体内薬物移行量に比例し、全身クリアランスに反比例することがわかる。また、体内薬物移行量は投与量に比例することから、血中濃度時間曲線下面積は投与量に比例することがわかる。
これらのことより、薬物Aの血中濃度時間曲線下面積(AUC)を腎機能正常時と同じにするには、投与量を腎機能正常時の70%に変更すればよい。
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