薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 218,219
問218〜219
33歳女性。夫と2歳の娘との3人暮らし。2年前に慢性甲状腺炎(橋本病)と診断されて経過観察していたが、最近、疲れやすさ、皮膚の乾燥、便秘などの症状が現れるようになった。病院で検査を受けた結果、今回から薬物治療が開始になり、検査値が記載された処方箋を薬局に持参した。
(検査値)
甲状腺刺激ホルモン(TSH)20.2 µU/mL
遊離トリヨードサイロニン(FT3)1.2 pg/mL
遊離サイロキシン(FT4)0.5 ng/dL
問218(物理・化学・生物)
甲状腺とその機能に関与するホルモンに対し処方薬がもたらす変化として正しいのはどれか。2つ選べ。
1 甲状腺濾胞細胞による血液中のヨウ化物イオンの取り込みが亢進する。
2 処方薬が、徐々に代謝されて生じるT3により、甲状腺の機能が持続的に補われる。
3 甲状腺濾胞からのT4分泌が増強される。
4 血中のTSH濃度が低下する。
5 血中の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)濃度が上昇する。
問219(実務)
薬剤師は患者からの聞き取りで、ときどき市販の胃腸薬(スクラルファート含有)やサプリメント(鉄分含有)を服用することがあり、便秘予防にひじきなどの海藻類をよく食べるとの情報を得た。患者への指導として誤っているはどれか。1つ選べ。
1 薬物治療を行っている間は、海藻類を積極的に摂取してください。
2 処方薬服用中であっても妊娠を避ける必要はありません。
3 処方薬の影響で、脈が速くなることがあります。
4 処方薬とスクラルファート含有胃腸薬を併用する場合は、服用問隔をできるだけあけてください。
5 処方薬と鉄分含有サプリメントを併用する場合は、同時に服用しないでください。
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問218 解答 2、4
本患者は、2年前に慢性甲状腺炎(橋本病)と診断され、経過観察していたが、最近、疲れやすさ、皮膚の乾燥、便秘といった甲状腺機能低下の症状が現れるようになったため、レボチロキシンナトリウムを用いた甲状腺ホルモンの補充療法が実施された。
1 誤
本患者に処方されたレボチロキシンナトリウムはT4製剤であり、末梢組織にてT3に代謝されることで甲状腺の機能を持続的に補うことを目的としている。なお、甲状腺濾胞細胞への血液中のヨウ化物イオンの取り込みは、TSHにより促進される。本治療により、血中のT4及びT3濃度の上昇を介した下垂体前葉へのフィードバックが血中TSH濃度を低下させるため、甲状腺濾胞細胞への血液中のヨウ化物イオンの取り込みは抑制される。
2 正
解説1参照
3 誤
解説1参照。レボチロキシンナトリウムは甲状腺ホルモンの補充療法であり、甲状腺濾胞からのT4分泌を増強する作用はない。
4 正
解説1参照
5 誤
本治療により、血中のT4及びT3濃度の上昇を介した視床下部へのフィードバックが血中TRH濃度を低下させる
問219 解答 1
1 誤っている
ヨウ素含有量の多い海藻類などの過剰摂取は、甲状腺機能を低下させ、甲状腺機能低下症を悪化させる恐れがある。そのため、海藻類の過剰摂取は、本患者への指導内容として不適切である。
2 正しい
レボチロキシンナトリウムなどの甲状腺ホルモン製剤には、胎盤通過性がほとんどないため、妊娠を避ける必要はない。
3 正しい
レボチロキシンナトリウムなどの甲状腺ホルモン製剤は、カテコールアミンの感受性増大作用があるため、心機能亢進に伴い、頻脈が起こることがある。
4 正しい
アルミニウムを含有するスクラルファートとレボチロキシンナトリウムを併用すると、レボチロキシンナトリウムの吸収が遅延または減少することが報告されている。そのため、スクラルファートと併用する際は、同時服用を避け、投与間隔をあけるよう指導する必要がある。
5 正しい
鉄剤含有のサプリメントとレボチロキシンナトリウムを併用すると、レボチロキシンナトリウムの吸収が遅延または減少することが報告されている。そのため、鉄剤含有のサプリメントと併用する際は、同時服用を避け、投与間隔をあけるよう指導する必要がある。
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