薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 226,227
問226〜227
70歳男性。10年前から2型糖尿病と前立腺がんに羅患し治療を受けている。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断を受け、治療中である。今回友人より、「あなたは70歳だけど肺炎球菌ワクチンの接種をしないのか」と聞かれ、ワクチン接種の相談に薬局を訪れた。患者はインフルエンザワクチンを接種したことはあるが、肺炎球菌ワクチンを接種した経験はなかった。
問226(衛生)
薬剤師はこの患者からワクチンについて相談を受けた。この患者に接種が検討される肺炎球菌ワクチンに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 このワクチンは、肺炎球菌の病原性を弱毒化した生ワクチンである。
2 このワクチンには、血清型の異なる肺炎球菌の莢膜多糖が含まれている。
3 この患者には、予防接種法による集団予防を目的として肺炎球菌ワクチンが接種される。
4 このワクチンは、ジフテリア毒素がアジュバントとして結合しているので、ジフテリアの予防もできる。
5 ワクチン接種後、この患者に健康被害が生じた場合、予防接種健康被害救済制度により救済措置を受けることができる。
問227(実務)
肺炎球菌ワクチン及びこの患者のワクチン接種に関する注意点について、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 糖尿病の治療中のため、肺炎球菌ワクチンの接種不適当者である。
2 前立腺がんの治療中のため、肺炎球菌ワクチンの接種不適当者である。
3 肺炎球菌ワクチンは、室温保存できる。
4 肺炎球菌ワクチンは、筋肉内注射できる。
5 インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンは混合して投与できる。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問226 解答 2、5
肺炎球菌ワクチンには、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンと沈降13価肺炎球菌結合型ワクチンの2種類があり、65歳以上の高齢者の定期接種に使用されるのは23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンである。
1 誤
本ワクチンは、肺炎球菌の莢膜成分由来の不活化ワクチンである。
2 正
肺炎球菌は、莢膜多糖の違いにより97種類以上の血清型があることが知られている。本剤を含め肺炎球菌ワクチンは、血清型の異なる肺炎球菌の莢膜多糖が複数含まれている。
3 誤
予防接種法の対象疾患には、集団予防を目的としているA類疾病と個人予防を目的としているB類疾病がある。65歳以上の高齢者を対象とした肺炎球菌感染症は、個人予防を目的としているB類疾病である。
4 誤
本ワクチンにアジュバントは用いられていない。アジュバントとは、ワクチンと併用することにより、ワクチンの免疫原性を高めることができる物質であり、ワクチンの免疫原性が低いときに用いられる。なお、小児用肺炎球菌ワクチン(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)では、アジュバントが用いられている。
5 正
予防接種には、予防接種法に基づく定期接種と予防接種法に基づかない任意接種がある。定期接種により健康被害が認められた場合、予防接種健康被害救済制度により救済措置を受けることができる。一方、任意接種により健康被害が認められた場合、医薬品副作用被害救済制度または生物由来製品感染等被害救済制度により救済措置を受けることができる。
問227 解答 4
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンは、2歳未満の者、明らかな発熱を呈している者、重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者、本剤の成分によりアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者などには接種不適当である。
1 誤
前記参照。糖尿病患者は、肺炎球菌ワクチンの接種不適当者ではない。むしろ、肺炎球菌ワクチンは、心・呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏等の基礎疾患のある患者の肺炎球菌感染症の予防に用いられる。
2 誤
前記参照。前立腺がん患者は、肺炎球菌ワクチンの接種不適当者ではない。
3 誤
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンの貯法として、8℃以下、凍結を避けることとされている。そのため室温保存は適切でない。
4 正
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンは、1回0.5 mLを筋肉内又は皮下に注射する。
5 誤
23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンは、他のワクチンと混合して接種しないこととされている。ただし、医師が必要と認めた場合には、他のワクチンと同時に摂取することができる。
-
解説動画1 ( 15:29 )
-
※ この解説動画は 60 秒まで再生可能です
再生速度
|
|
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿