薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 236,237
問236〜237
44歳男性。高速道路などの橋梁塗装作業に従事している。6ヶ月に一度の特殊健康診断時に、自覚症状として、全身倦怠感、食欲不振、腹痛やめまいなどを申告した。その後、血液検査結果から産業医が有害物質による中毒と診断し、医療機関での診察を勧めた。
尿中δ−アミノレブリン酸濃度5.5 mg/L
血液検査:赤血球数420×104 /µL、白血球数4,700 /µL、血小板数27×104 /µL、Hb 10.2 g/dL、Ht 36%
問236(実務)
この患者に使用する解毒薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ジメルカプロール
2 プラリドキシムヨウ化物
3 エデト酸カルシウムナトリウム水和物
4 亜硝酸アミル
5 アトロピン硫酸塩水和物
問237(衛生)
この患者の中毒原因となった物質に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 末梢神経障害の原因となる。
2 δ−アミノレブリン酸脱水酵素を阻害する。
3 体内でメチル化されて、有害作用を示す。
4 Fe3+のFe2+への還元反応を阻害して、フェロキラターゼを抑制する。
5 尿中のコプロポルフィリンを増加させる。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問236 解答 1、3
本患者の尿中所見のδ−アミノレブリン酸は無機鉛のバイオマーカーであり、その値が高値(正常値:2.2 mg/L)であること、「橋梁塗料作業に従事している」、「自覚症状として、全身倦怠感、食欲不振、腹痛やめまいなどを訴えている」ことから無機鉛による中毒と考えられる。また、血液検査の結果より、赤血球、Hb及びHtが低下していることから、無機鉛中毒による貧血を起こしていると考えられる。
1 正
ジメルカプロール(BAL)は、水銀、鉛、ヒ素といった重金属とキレートを形成し、その解毒を図る。ただし、カドミウムやセレン、鉄といった重金属の中毒時は、その毒性を高めるため使用しない。
2 誤
プラリドキシムヨウ化物(2−PAM)は、リン酸化されたコリンエステラーゼを再賦活化することで、有機リン系化合物などの中毒時の解毒に用いられる。
3 正
エデト酸カルシウムナトリウム水和物(EDTA)は、鉛などの重金属とキレートを形成し、その解毒を図る。
4 誤
亜硝酸アミルは、シアン化合物の中毒時の解毒に用いられる。亜硝酸アミルは、血中でヘモグロビン(Fe2+)をメトヘモグロビン(Fe3+)に酸化することで、シアンとシトクロムcオキシダーゼ(Fe3+)の結合を解離させる。
5 誤
アトロピン硫酸塩水和物は、有機リン系化合物やカルバメート系農薬の中毒時に認められる副交感神経興奮症状の改善に用いられる。
問237 解答 3
1 正しい
無機鉛による末梢神経障害の機序として、軸索変性が主と考えられている。
2 正しい
無機鉛の造血器系の毒性発現機序として、ヘム合成に関与するδ−アミノレブリン酸(ALA)脱水酵素の阻害と、Fe3+からFe2+への還元反応を阻害し、フェロキラターゼの活性を抑制することでのヘム合成阻害がある。
3 誤っている
生体内において、無機鉛はメチル化されない。生体内で効率よくメチル化される重金属は無機ヒ素である。
4 正しい
解説2参照
5 正しい
解説2参照。コプロフィリノーゲンⅢは、コプロフィリンに代謝され尿中排泄される。
-
解説動画1 ( 12:53 )
-
※ この解説動画は 60 秒まで再生可能です
再生速度
|
|
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿