薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 238,239
問238〜239
46歳女性。職場の検診で乳がんを疑われ、精密検査を受けるため大学病院を受診した。病変部の組織診(針生検)を行い、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)及びHER2(ヒト上皮増殖因子受容体2型)のタンパク質発現を病理学的検査により調べた。また、リンパ節や全身への転移の有無をCT検査にて確認し、StageⅡBの乳がんと確定診断された。その結果に基づき、術前化学療法としてEC療法※、次にパクリタキセル療法を実施した。
その後、乳房温存術を施行、内分泌療法は行わず経過観察としていたが、翌年再発が判明したため、遺伝学的検査(BRCA遺伝子変異)をし、その結果、オラパリブを投与することとなった。
※EC療法:エピルビシン+シクロホスファミド併用
問238(衛生)
検査の対象となったHER2タンパク質及びBRCA遺伝子に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1 乳がんではHER2タンパク質の過剰発現が高頻度でみられる。
2 HER2タンパク質は、受容体型チロシンキナーゼである。
3 BRCA遺伝子は、GTP結合タンパク質をコードしている。
4 BRCA遺伝子は、DNA修復に関わるタンパク質をコードしている。
5 遺伝性乳がんでは、高頻度でBRCA遺伝子に変異がみられる。
問239(実務)
この患者の病理学的検査結果及び遺伝学的検査結果の組合せとして、正しいのはどれか。1つ選べ。
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問238 解答 3
1 正
乳がんや胃がんではHER2(ヒト上皮増殖因子受容体2型)タンパク質の過剰発現が高頻度でみられる。
2 正
HER2タンパク質は、受容体型チロシンキナーゼである。HER2タンパク質にリガンドが結合すると、チロシンキナーゼが活性化され、細胞増殖や抗アポトーシスなどに関わるシグナル伝達が行われる。
3 誤
BRCA遺伝子は、DNA修復に関わるがん抑制遺伝子である。BRCA遺伝子に変異が起こると、DNAに生じた変異が修復できなくなるため、細胞のがん化につながる。なお、GTP結合タンパク質をコードしている遺伝子はRAS遺伝子である。
4 正
解説3参照
5 正
BRCA遺伝子にはBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子が確認されており、遺伝性乳がんでは、高頻度でBRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子のいずれかに変異がみられることが報告されている。
問239 解答 3
乳がんの薬物療法は、ホルモン受容体(エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR))やHER2などの発現を確認することで治療薬を選択する。
本患者の乳がん治療として、EC療法(エピルビシン+シクロホスファミド併用)、パクリタキセル療法を実施し、その後、オラパリブを投与予定である。
よって、リュープロレリンやタモキシフェンなどの内分泌療法を実施していないことからER、PgRは陰性と考えられ、抗HER2モノクローナル抗体であるトラスツズマブやペルツズマブを使用していないことからHER2は陰性であると考えられる。
なお、オラパリブは、HER2陰性かつBRCA遺伝子変異陽性の乳がんに使用されるので、BRCA遺伝子変異は陽性であると考えられる。
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解説動画1 ( 13:42 )
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