薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 246,247
問246〜247
87歳男性。3年前に脳出血で治療歴あり。認知症はないが、以前から、高血圧、排尿障害、心房細動の治療を受けている(処方1)。検査値は、Na 143 mEq/L、K 3.4mEq/L、eGFR 33.8 mL/min/1.73 m2、ALP 357 IU/L、AST 16 IU/L、ALT 15 IU/Lである。
最近、脳出血の後遺症と疑われる遅発性のてんかんと診断され、処方2が追加された。
問246(実務)
処方2の追加にあたり、医師からかかりつけ薬剤師に処方薬について相談があった。医師への提案として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 エドキサバントシル酸塩水和物錠の中止
2 ジスチグミン臭化物錠の減量
3 ウラピジルカプセルの中止
4 バルプロ酸ナトリウム徐放錠投与開始後の治療薬物モニタリング(TDM)の実施
5 改訂長谷川式簡易知能評価スケールを用いた評価の実施
問247(薬理)
処方1及び処方2のいずれかの薬物の作用機序として正しいのはどれか。2つ選べ。
1 ホスホジエステラーゼVの阻害
2 コリンエステラーゼの阻害
3 第Ⅷ因子の直接阻害
4 GABAトランスアミナーゼの阻害
5 シナプス小胞タンパク質SV2Aの阻害
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問246 解答 4
バルプロ酸は、タンパク質結合率などによって体内動態に影響を受けやすい薬物であり、投与開始後や投与量変更時に治療薬物モニタリング(TDM)の実施が推奨されているため、選択肢4が医師への提案として適切である。また、バルプロ酸は、カルバペネム系抗生物質との併用により、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌とされているが、エドキサバンやジスチグミン、ウラピジルとの相互作用は認められていないため、選択肢1、2、3は医師への提案としては不適切である。なお、改訂長谷川式簡易知能評価スケールは認知症の検査方法の1つであるが、本患者は認知症ではないため、選択肢5は医師への提案としては不適切である。
問247 解答 2、4
1 誤
シルデナフィルなどに関する記述である。シルデナフィルは、血管平滑筋細胞のホスホジエステラーゼVを阻害し、細胞内サイクリックGMP(cGMP)の分解を抑制することで血管を拡張させるため、肺動脈性肺高血圧症の治療などに用いられる。
2 正
処方1のジスチグミンに関する記述である。ジスチグミンは、可逆的にアセチルコリンエステラーゼを阻害し、アセチルコリンの分解を抑制することで、副交感神経を興奮させるため、排尿障害の治療などに用いられる。
3 誤
第Ⅷ因子の直接阻害作用を示す薬物はない。なお、間接的に第Ⅴa因子と第Ⅷa因子を阻害する薬物はトロンボモデュリン アルファである。トロンボモデュリン アルファは、トロンビンによるプロテインCの活性化を促進し、生成した活性化プロテインCが第Ⅴa因子と第Ⅷa因子を阻害することで、トロンビンの生成を抑制するため、汎発性血管内血液凝固症(DIC)の治療に用いられる。
4 正
処方2のバルプロ酸に関する記述である。バルプロ酸は、GABAトランスアミナーゼを阻害し、GABAの分解を抑制することで、脳内GABA濃度を増加させるため、てんかんの治療などに用いられる。
5 誤
レベチラセタムに関する記述である。レベチラセタムは、神経終末のシナプス小胞タンパク質SV2Aに結合し、神経終末からの神経伝達物質の放出を抑制することで、過剰な神経の興奮を抑制するため、てんかんの治療に用いられる。
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