薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 252,253
問252〜253
59歳男性。体重72 kg。糖尿病、高血圧、脂質異常症に対する治療を受けていた。同時期にうつ病に対しパロキセチンで治療を開始したが、抑うつが改善した後気分が高揚したため、双極性障害と診断され任意入院した。入院後特に焦燥感が強いと患者から訴えがあった。現在の服用薬剤は処方1のとおり。
問252(薬理)
処方1のいずれかの薬物の薬理作用にあてはまるのはどれか。2つ選べ。
1 B型モノアミンオキシダーゼ(MAOB)の阻害
2 ドパミンD2受容体とセロトニン5−HT2A受容体の遮断
3 ホスファチジルイノシトール(PI)代謝回転の促進
4 アンジオテンシン変換酵素の阻害
5 AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化
問253(実務)
患者から、ふらつきがひどくて歩きづらいとの訴えが強かった。また、家族より、時折発汗、流涎、手の震えに加えて身動きもせず黙り込むなどの症状も散見されるとの情報を得た。副作用軽減を念頭に、主治医に薬剤師が提案する内容として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 ロスバスタチン錠の増量
2 リスペリドン錠の減量
3 メトホルミン塩酸塩錠の減量
4 オルメサルタン メドキソミル錠の増量
5 ブロチゾラム錠の追加
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問252 解答 2、5
1 誤
セレギリンなどに関する記述である。セレギリンは、B型モノアミンオキシダーゼ(MAOB)を阻害することでドパミンの不活化を抑制し、中枢内のドパミン量を増大させるため、パーキンソン病に用いられる。
2 正
処方薬であるリスペリドンに関する記述である。リスペリドンは、ドパミンD2受容体とセロトニン5−HT2A受容体を遮断するため、統合失調症に用いられる。
3 誤
ホスファチジルイノシトール(PI)代謝回転に影響を与える薬物として炭酸リチウムがある。炭酸リチウムは、作用機序の詳細は不明だが、PI代謝回転を抑制すると考えられているため、躁病および躁うつ病の躁状態に用いられる。
4 誤
エナラプリルなどのアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に関する記述である。エナラプリルは、ACEを阻害することで、アンギオテンシンⅠからアンギオテンシンⅡへの変換を抑制し、アンギオテンシンⅡによる昇圧作用を抑制するため、高血圧症に用いられる。
5 正
処方薬であるメトホルミンに関する記述である。メトホルミンは、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化することで、骨格筋での糖利用を促進、肝臓での糖新生を抑制するため、2型糖尿病に用いられる。
問253 解答 2
患者や家族から、「ふらつきがひどくて歩きづらい。時折発汗、流涎、手の震えに加えて身動きもせず黙り込むなどの症状も散見される」との訴えがあることから、悪性症候群の発症が疑われる。したがって、薬剤師が主治医に提案する内容としては、処方薬のうち原因薬物として推定されるリスペリドン錠の減量が適切となる。
なお悪性症候群とは、抗精神病薬などにより引き起こされる副作用であり、高熱、自律神経症状(発汗、流涎、頻脈)、錐体外路症状(歩行の変化、手足の震え)などの症状が現れる。
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