薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 254,255
問254〜255
83歳男性、独居。日常生活動作はほぼ自立している。心房細動や高血圧、軽度のアルツハイマー型認知症で薬物治療を受けていた。3ヶ月前に転倒し強い腰痛と軽度不眠のために医療機関にかかり、治療が開始された。昨夜自宅居間で転倒し、頭部を強打したため救急車で搬送され、入院となった。お薬手帳から入院時の持参薬は処方1と処方2であった。来院時の主な所見は、下肢の浮腫や多数の紫斑を認めるほか、PT−INR 2.3、血清クレアチニン1.7 mg/dL、eGFR 30.5 mL/min/1.73 m2であった。なお、画像解析から頭部に出血等の異常は認めていない。
問254(薬理)
処方1及び処方2の薬物の副作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 プレガバリンは、γ−アミノ酪酸GABAB受容体を刺激し、めまいや眠気を誘発する。
2 リバスチグミンは、アセチルコリン受容体を遮断することで、尿失禁を起こす。
3 ニトラゼパムは、GABAの作用を増強して、ふらつきや倦怠感、残眠感を生じる。
4 ワルファリンは、ビタミンKが関与する血液凝固因子の生成を抑制することで、出血傾向を生じる。
5 ビソプロロールは、アドレナリンα受容体とアドレナリンβ受容体を遮断することで尿失禁を誘発する。
問255(実務)
薬剤部にお薬手帳をもとに薬剤を整理するよう医師より依頼があった。聞き取りの結果、ふらつきは3ヶ月前の転倒以後に自覚するようになったこと、1ヶ月ほど前より尿失禁を繰り返すこと、腰痛は既に軽快しているとの情報を得た。医師への薬剤整理の提案として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 リバスチグミンパッチをまとめた上で減量
2 ニトラゼパム錠の服用を朝食後に変更
3 ビソプロロール錠を中止
4 プレガバリン口腔内崩壊錠を中止
5 ワルファリン錠を減量
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問254 解答 3、4
1 誤
プレガバリンは、電位依存性Ca2+チャネルのα2δサブユニットに結合し、Ca2+流入を抑制することで、グルタミン酸などの神経伝達物質の遊離を抑制するため、神経障害性疼痛などに用いられる。グルタミン酸などの神経伝達物質の遊離を抑制するため、副作用としてめまいや眠気を誘発する恐れがある。なお、γ−アミノ酪酸GABAB受容体を刺激する薬物は、中枢性筋弛緩薬であるバクロフェンである。
2 誤
リバスチグミンは、アセチルコリンエステラーゼ及びブチリルコリンエステラーゼを可逆的に阻害することでアセチルコリンの代謝を抑制し、脳内アセチルコリン量を増加させるため、アルツハイマー型認知症に用いられる。また、末梢においてもアセチルコリンを増加させ、膀胱平滑筋のムスカリン性アセチルコリン受容体が刺激され膀胱平滑筋が収縮するため、副作用として尿失禁を起こす恐れがある。
なお、ムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断する薬物は、抗コリン薬のアトロピンなどであり、ニコチン性アセチルコリン受容体を遮断する薬物は、自律神経節遮断薬のヘキサメトニウムなどである。
3 正
ニトラゼパムは、GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に結合し、中枢抑制物質であるGABAの作用を増強するため不眠症に用いられる。中枢神経抑制作用の結果、副作用としてふらつきや倦怠感、残眠感を生じる恐れがある。
4 正
ワルファリンは、肝臓においてビタミンKと拮抗し、プロトロンビン(第Ⅱ因子)や第Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子などのビタミンK依存性血液凝固因子の生成を抑制するため、血栓塞栓症に用いられる。血液凝固抑制する結果、副作用として出血傾向を生じる恐れがある。
5 誤
ビソプロロールは、選択的β1受容体遮断薬であり、心機能抑制作用及びレニン分泌抑制作用を示すため、心房細動や高血圧などに用いられる。交感神経を抑制する結果、頻尿の副作用は報告されているが、尿失禁を起こすとの報告はない。
問255 解答 1、4
本患者への聞き取りの結果、ふらつきは3ヶ月前の転倒以後に自覚するようになったこと、1ケ月ほど前より尿失禁を繰り返すこと、腰痛は既に軽快しているとあることから、ふらつきはプレガバリン、ニトラゼパムの副作用である可能性があり、既に腰痛は軽快していることからプレガバリン口腔内崩壊錠を中止することが望ましい。また、尿失禁はリバスチグミンの副交感神経興奮様の副作用である可能性があるので、処方1および2のリバスチグミンパッチをまとめた上で減量することが望ましい。
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