薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 256,257
24歳女性。身長156 cm、体重40 kg。以前より労作性の息切れを自覚していた。出産後に血圧低下、呼吸状態の悪化を来し、スクリーニングの結果、肺高血圧症と診断を受け、以下の処方で治療を開始した。
問256(薬理)
薬物の作用機序に関する以下の記述のうち、処方薬のいずれにも該当しないのはどれか。1つ選べ。
1 血管平滑筋において、ホスホジエステラーゼVを阻害し、細胞内サイクリックGMP(cGMP)の分解を抑制して、血管を拡張させる。
2 集合管において、アルドステロン受容体を遮断してNa+/K+交換系を抑制し、利尿効果を示す。
3 エンドセリンETA受容体を選択的に遮断し、エンドセリン−1による血管収縮を抑制する。
4 プロスタノイドIP受容体を刺激し、細胞内サイクリックAMP(cAMP)産生を促進させて血管拡張作用と血小板凝集抑制作用を示す。
5 ヘンレ係蹄上行脚において、Na+−K+−2Cl-共輸送系を阻害し、対向流増幅系を抑制する。
問257(実務)
経過観察のため受診したところ、肺機能については改善を示しつつあるが、顔面や四肢のむくみなど未だ改善が見られない症状を認めた。さらに、生化学検査のうち血清カリウム値が4.1 mEq/Lから3.0mEq/Lに低下していたことから、薬剤師が医師から処方について相談された。以下のうち、最も適切な提案内容はどれか。1つ選べ。
1 トルバプタン錠の追加
2 エポプロステノール静注用の増量
3 フロセミド錠の増量
4 アスパラギン酸カリウム錠の追加
5 リオシグアト錠の追加
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問256 解答 3
1 該当する
設問の記述は、タダラフィルの作用機序である。タダラフィルは、血管平滑筋において、選択的にホスホジエステラーゼVを阻害し、細胞内サイクリックGMP(cGMP)の分解を抑制して、細胞内cGMPを増加させることで、血管を拡張させる。
2 該当する
設問の記述は、エプレレノンの作用機序である。エプレレノンは、抗アルドステロン薬であり、集合管において、アルドステロン受容体を遮断してNa+/K+交換系を抑制し、利尿効果を示す。
3 該当しない
設問の記述は、アンブリセンタンの作用機序であり、処方薬のうち、設問の記述に該当する薬物はない。なお、ボセンタンは、エンドセリンETA受容体及びETB受容体を非選択的に遮断し、エンドセリン−1による血管収縮を抑制する。
4 該当する
設問の記述は、エポプロステノールの作用機序である。エポプロステノールは、プロスタノイドIP受容体を刺激し、細胞内サイクリックAMP(cAMP)産生を促進させて、細胞内cAMPを増加させることで、血管拡張作用と血小板凝集抑制作用を示す。
5 該当する
設問の記述は、フロセミドの作用機序である。フロセミドは、ループ利尿薬であり、ヘンレ係蹄上行脚において、Na+−K+−2Cl-共輸送系を阻害し、対向流増幅系を抑制することで利尿効果を示す。
問257 解答 1
本患者は、肺機能については改善を示しつつあるが、顔面や四肢のむくみなど未だ改善が見られず、さらに、生化学検査のうち血清カリウム値が4.1 mEq/Lから3.0mEq/Lに低下していたことから処方薬のフロセミドによる低カリウム血症が認められると考えられる。これらのことから、顔面や四肢のむくみの改善と低カリウム血症の改善を目的としては、トルバプタン錠の追加を提案することが最も適切である。
トルバプタンは、バソプレシンV2受容体を遮断し、集合管における水の再吸収を抑制し利尿効果を示すことから顔面や四肢のむくみの改善が期待でき、さらに水利尿作用により血中のカリウムなどの電解質濃度を上昇させることから低カリウム血症の改善も期待できる。なお、アスパラギン酸カリウムは、低カリウム血症の改善に用いられるが、エプレレノン投与中の高血圧症の患者には併用禁忌のため、追加するのは適切ではない。
-
解説動画1 ( 07:19 )
-
※ この解説動画は 60 秒まで再生可能です
再生速度
|
|
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿