薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 260,261
60歳女性。身長160 cm、体重75 kg。検診にて50歳時に脂質異常症を、55歳時に糖尿病を指摘され加療中である。また、昨年よりeGFRが36.3 mL/min/1.73 m2まで低下したため生活指導も受けている。外来診療において、次の薬剤が処方されている。
問260(実務)
家族歴として、父母に心筋梗塞、父に糖尿病と脳梗塞の既往があることを聴取した。血糖値は安定しているが、LDL値200 mg/dL、HDL値20 mg/dL、TG値140 mg/dLのように,血中脂質濃度が十分にコントロールできていない。この患者に対する処方の修正を提案する場合、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 エボロクマブ皮下注ペンの追加
2 ペマフィブラート錠の追加
3 コレスチミド錠の追加
4 イコサペント酸エチル粒状カプセルの追加
5 エンパグリフロジン錠の増量
問261(薬理)
処方されている薬物及び前問で処方の修正を提案する薬物のうち、脂質異常症の改善に寄与する薬物の作用機序はどれか。2つ選べ。
1 肝細胞膜上の電位依存性Ca2+チャネルを遮断することで、血中へのVLDL分泌を抑制する。
2 HMG−CoAの生合成を阻害することで、コレステロールの生合成を抑制する。
3 胆汁酸の小腸からの再吸収を抑制することで、肝細胞膜上のLDL受容体数を減少させる。
4 プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に結合することで、LDL受容体の分解を抑制する。
5 小腸刷子縁のコレステロールトランスポーターを阻害することで、小腸からのコレステロールの吸収を抑制する。
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問260 解答 1、3
問題文中にあるように、本患者は糖尿病を合併している脂質異常症である。この場合の目標LDL値は120 mg/dL未満であるが、本患者のLDL値は200 mg/dLであり、現在の処方ではLDL値をコントロールできていないと考えられる。選択肢の中で、エボロクマブとコレスチミドは、主にLDL値の低下作用を示す薬物のため、この患者に対する処方の修正の提案として適切である。なお、ペマフィブラートやイコサペント酸エチルは、主に血中トリグリセリド(TG)の低下作用を示すが、本患者のTG値は140 mg/dLであり目標値である150 mg/dL未満を満たしているので、この患者に対する処方の修正の提案としては適切ではない。また、エンパグリフロジンは、SGLT2を阻害することで血糖値を下げる糖尿病治療薬である。エンパグリフロジンは、本患者のようなeGFRが36.3 mL/min/1.73 m2の中等度腎機能障害患者では効果が十分に得られない可能性があり、継続的にeGFRが45 mL/min/1.73 m2の場合には投与の中止を検討することとされている。そのため、エンパグリフロジン錠の増量を提案することは、この患者に対する処方の修正の提案としては適切ではない。
問261 解答 4、5
1 誤
設問の記述に該当する薬物はない。なお、イコサペント酸エチルは、ステロール調節要素結合転写因子(SREBP-1c)を抑制し、肝臓でのTG合成を抑制することにより、血中へのVLDL分泌を抑制する。
2 誤
設問の記述に該当する薬物はない。なお、ロスバスタチンなどのスタチン系薬物は、HMG−CoA還元酵素を阻害し、肝臓におけるコレステロールの生合成を抑制する。
3 誤
設問の記述に該当する薬物はない。なお、コレスチミドは、陰イオン交換樹脂であり、腸管内で胆汁酸と結合し胆汁酸の小腸からの再吸収を抑制し、胆汁酸排泄を促進する。その結果、肝細胞内でコレステロールから胆汁酸への異化が亢進し、肝臓でのコレステロール需要が高まることで、肝細胞表面のLDL受容体数が増加し、血清LDL値を低下させる。
4 正
設問の記述に該当する薬物は、エボロクマブである。エボロクマブは、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に結合することで、LDL受容体の分解を抑制し、血中LDLの肝細胞内への取り込みを促進させる。
5 正
設問の記述に該当する薬物は、エゼチミブである。エゼチミブは、小腸刷子縁のコレステロールトランスポーター(NPC1L1)を阻害することで、小腸からのコレステロールの吸収を抑制することで、食事性及び胆汁性コレステロールの吸収を阻害する。
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