薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 262,263
50歳男性。身長165 cm、体重65 kg。膠原病として全身性強皮症と診断され、以下の処方で加療中である。
問262(薬理)
強皮症の治療には毛細血管閉塞の改善を目的として抗血小板薬が用いられる。処方薬の中で、抗血小板作用を示す薬物の機序として正しいのはどれか。2つ選べ。
1 トロンボキサン(TX)合成酵素を選択的に阻害することにより、TXA2の産生を阻害する。
2 プロスタノイドIP受容体を刺激して、血小板内のサイクリックAMP(cAMP)産生を増加させる。
3 ホスホジエステラーゼⅢを選択的に阻害して、血小板内のcAMPを増加させる。
4 セロトニン5−HT2受容体を遮断することにより、血小板内Ca2+濃度の上昇を抑制する。
5 ADP受容体のサブタイプであるP2Y12受容体を遮断することにより、血小板内のcAMPの減少を抑制する。
問263(実務)
右つまさきや踵に潰瘍を認め、皮膚硬化の経過が思わしくないため入院治療を開始するにあたり、シクロホスファミドを処方することになったと医師より連絡があった。薬剤師が医師に対して提案する内容として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 プレドニゾロン錠の減量・中止
2 プレドニゾロン錠の増量
3 シロスタゾール口腔内崩壊錠の増量
4 シロスタゾール口腔内崩壊錠の減量・中止
5 ベラプロストナトリウム錠の増量
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問262 解答 2、3
処方薬のうち抗血小板薬に該当するのは、シロスタゾール口腔内崩壊錠とベラプロストナトリウム錠である。
1 誤
設問の記述に該当する薬物は、処方薬にはない。なお、オザグレルは、トロンボキサン(TX)合成酵素を選択的に阻害することにより、TXA2の産生を阻害し、血小板凝集を抑制する。
2 正
設問の記述は、ベラプロストの作用機序である。ベラプロストは、プロスタノイドIP受容体を刺激して、血小板内のサイクリックAMP(cAMP)産生を増加させ、血小板凝集を抑制する。
3 正
設問の記述は、シロスタゾールの作用機序である。シロスタゾールは、ホスホジエステラーゼⅢを選択的に阻害して、血小板内のcAMPを増加させ、血小板凝集を抑制する。
4 誤
設問の記述に該当する薬物は、処方薬にはない。なお、サルポグレラートは、セロトニン5−HT2受容体を遮断することにより、血小板内Ca2+濃度の上昇を抑制し、血小板凝集を抑制する。
5 誤
設問の記述に該当する薬物は、処方薬にはない。なお、チクロピジンやクロピドグレルなどは、活性代謝物に変換されADP受容体のサブタイプであるP2Y12受容体を遮断することにより、血小板内のcAMPの減少を抑制し、血小板凝集を抑制する。
問263 解答 1
シクロホスファミドは、治療抵抗性の全身性強皮症などに用いられる。シクロホスファミドは、主に肝臓のCYP2B6により代謝されることで活性化されるプロドラッグであり、活性代謝物がアルキル化作用を示すことで薬理作用を発現する。
処方薬のうち、副腎皮質ステロイド性薬であるプレドニゾロンは、肝臓におけるシクロホスファミドの代謝を阻害することで、活性化を抑制し作用を減弱させる恐れがある。そのため、シクロホスファミドを追加投与する上では、プレドニゾロンの減量・中止を提案することが最も適切である。
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