薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 290,291
68歳男性。30歳時に結核、52歳時に脂質異常症を指摘され、ロスバスタチンを内服中である。2年前に急性心筋梗塞を発症し、その際に出現した心室頻拍と心室細動に対してアミオダロンによる治療が開始され、その後症状は安定していた。本日、呼吸困難のため緊急入院となった。3ヶ月前から食欲がなく、息切れを自覚していた。入院時に発熱はなく、主な検査値は以下のとおりで、白血球数が増加、CRP、LDHが高値を示していた。
(検査値)
血圧102/65 mmHg、心拍数100拍/分、SpO2 93%、Hb 12.7 g/dL、白血球数10,600 /µL、AST 26 IU/L、ALT 21 IU/L、LDH 184 IU/L、eGFR 56.3 mL/ min/1.73 m2、CRP 14.3 mg/dL、QFT(クォンティフェロン)陰性、モニター心電図で異常所見なし
問290(病態・薬物治療)
この患者の病態として、可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
1 胸部聴診所見で、水泡音が聴取される。
2 血液検査で、シアル化糖鎖抗原KL−6の値が高値を示す。
3 動脈血液ガス検査で、高炭酸ガス血症を伴う。
4 CTにて、両側肺に広範囲のすりガラス陰影を認める。
5 肺機能検査で、%VCは変化せず、FEV1.0%が低下している。
問291(実務)
この患者への対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 アミオダロンを中止する。
2 ステロイドパルス療法を実施する。
3 ステロイド吸入療法を実施する。
4 人工呼吸器を装着する。
5 リファンピシンを投与する。
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問290 解答 2、4
「2年前アミオダロンによる治療が開始された」と「3ヶ月から息切れを自覚し、本日、呼吸困難が生じた」、「入院時の検査値として、白血球数が増加、CRP、LDHが高値を示していた」という点から、本患者は薬剤性間質性肺炎を発症したと推測される。
1 誤
胸部聴診所見にて水泡音が聴取される代表的な疾患は、肺水腫や細菌性肺炎である。なお、間質性肺炎では胸部聴診所見にて捻髪音が聴取される。
2 正
シアル化糖鎖抗原KL−6は、Ⅱ型肺胞上皮細胞などで産生される糖タンパクであり、間質性肺炎によるⅡ型肺胞上皮細胞の傷害、再生に伴い上昇する。
3 誤
高炭酸ガス血症は、COPDなどの呼息障害時に認められる。原則、間質性肺炎は呼息障害を伴わないため、高炭酸ガス血症を認めない。
4 正
間質性肺炎の胸部CT所見として、びまん性のすりガラス状陰影を認める。
5 誤
間質性肺炎のような拘束性換気障害では、呼吸機能検査にて、%VC(%肺活量)の低下を認める。なお、FEV1.0%(1秒率)は、COPDなどの閉塞性換気障害を認める疾患で低下する。
問291 解答 1、2
1 正
本患者は、アミオダロンによる薬剤性間質性肺炎を引き起こした可能性が高いため、原因薬物であるアミオダロンの投与を中止すべきである。
2 正
間質性肺炎の重症例や急性増悪期には、副腎皮質ステロイド性薬のパルス療法が行われる。
3 誤
副腎皮質ステロイド性薬の吸入療法は、気管支ぜん息の長期管理などに用いられる。
4 誤
人工呼吸器は、呼吸不全や循環障害、意識障害などの患者に対して、呼吸を補助する目的で用いられる。人工呼吸器開始基準として、呼吸数が5回/分以下の徐呼吸、40回/分以上の頻呼吸、PaO2(動脈血酸素分圧)が60 mmHg未満、SpO2(動脈血酸素飽和度)が90%未満などがある。本患者のSpO2は93%であり、人工呼吸器の開始基準に該当しない。
5 誤
QFT検査が陰性であることから活動性結核の可能性は低いため、リファンピシンなどの抗結核薬の投与は不適切である。
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