薬剤師国家試験 令和03年度 第106回 - 一般 実践問題 - 問 312,313
34歳女性(患者A)。閉経前早期乳がんの患者。部分切除術後の迅速病理診断の結果によりエストロゲン受容体が陽性、プロゲステロン受容体が陰性、HER2が陰性であった。タモキシフェンクエン酸塩の処方を検討しているため、医師から薬剤師に、患者に対する薬剤の情報提供依頼があった。
問312(法規・制度・倫理)
薬剤師と患者Aの以下の会話において、治療に対する患者の葛藤を要約している薬剤師のコミュニケーションはどれか。1つ選べ。
薬剤師:①医師からはどの様な説明がありましたか?
患者A:手術後の抗がん剤治療について薬剤師さんから説明を聞いてと言われました。
薬剤師:②抗がん剤治療についてどの様にお考えですか?
患者A:抗がん剤の副作用は怖いと聞いているので心配です。
薬剤師:③副作用が心配なんですね。
患者A:はい。実はそろそろ子どもが欲しいと思っていたので・・・この治療を受けて妊娠に影響がないのか心配です。
薬剤師:④この治療が妊娠にどのような影響があるのか心配なんですね。
患者A:はい。でも、もし治療をしないで再発したら家族にも迷惑をかけるので悩んでいます・・・。
薬剤師:⑤妊娠への影響も心配だけれど治療をしないで再発するのも困る、と悩まれているんですね。
患者A:そうなんです。このお薬で大丈夫でしょうか?
1 ①
2 ②
3 ③
4 ④
5 ⑤
問313(実務)
薬剤師と患者Aの以下の会話において、薬物治療に関する説明として誤っているのはどれか。1つ選べ。
薬剤師:⑥タモキシフェンはAさんの症状に合った治療薬だと思います。
患者A:このお薬はいつまで続けなくてはいけないのですか。
薬剤師:⑦タモキシフェンは再発予防として5年程度飲むことになります。
患者A:そんなに長く飲むのですね。その間は妊娠できないのでしょうか。
薬剤師:⑧胎児に影響がでる可能性があるので、妊娠を希望される場合はタモキシフェンの内服を中止して1ヶ月以上空けてからになります。
患者A:そうですか・・・。他の抗がん剤はどうなのでしょうか?
薬剤師:⑨再発予防にはシクロフォスファミドというお薬もありますが、無月経になることがあります。
患者A:だから私にはタモキシフェンが合っているということですね。
薬剤師:⑩そうですね。妊娠時期については生殖補助技術もありますので、ご家族とご相談くださいね。
患者A:はい、よくわかりました。家族ともよく相談してみます。
1 ⑥
2 ⑦
3 ⑧
4 ⑨
5 ⑩
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問312 解答 5
本患者は、閉経前乳がんの治療をタモキシフェンクエン酸塩で行うことを検討しているが、妊娠への影響を懸念している。よって、今回の葛藤の要約としては、「妊娠への影響も心配だけれど治療をしないで再発するのも困る、と悩まれているんですね」が該当する。
問313 解答 3
1 正
本患者は、エストロゲン受容体が陽性であるため、タモキシフェンクエン酸塩を使用する説明は適切である。
2 正
閉経前乳がん患者の手術後のホルモン療法では、タモキシフェンクエン酸塩を手術後に5年間服用すると、再発の危険性を軽減することができるため、説明として適切である。
3 誤
タモキシフェンクエン酸塩は、自然流産、先天性欠損、胎児脂肪等が報告されているため、妊婦又は妊娠している可能性のある女性への投与は禁忌である。また、タモキシフェンクエン酸塩の場合、薬が体内から出るまでには、約2ヶ月かかるという報告があるため、タモキシフェンクエン酸塩の投与終了後、少なくとも2ヶ月以上は妊娠を避ける必要がある。よって、タモキシフェンクエン酸塩の内服を中止して1ヶ月以上空けてからという説明は不適切である。
4 正
アルキル化薬の一種であるシクロホスファミドは、乳がんなどの治療に用いられ、副作用として無月経などがあるため、説明として適切である。
5 正
生殖補助医療(ART)とは、体外受精をはじめとする、近年進歩した新たな不妊治療法で、採卵により卵子を体外に取り出し、精子と共存させる(媒精)ことにより得られた受精卵を、数日培養後、子宮に移植する(胚移植)治療法である。よって、本患者は、妊娠を希望されているため、説明として適切である。
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