薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 理論問題 - 問 100
キャピラリー電気泳動は、微量の試料の分析に極めて有用であり、臨床検査における血清タンパク質の分析にも用いられている。溶融シリカ毛細管を用いたキャピラリー電気泳動に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 pH7の緩衝液を用いると、電気浸透流は陰極から陽極の方向に向かう。
2 キャピラリーゾーン電気泳動ではpH7の緩衝液を用いると、陽イオン性物質と中性物質は同時に泳動される。
3 キャピラリーゲル電気泳動でタンパク質を分離すると、分子サイズの大きい順に検出される。
4 キャピラリー等電点電気泳動では、緩衝液に両性電解質(ポリアミノカルボン酸など)を溶解して分離を行う。
5 ミセル動電クロマトグラフィーでは、中性物質の相互分離が可能である。
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解答 4、5
1 誤
pH7の緩衝液を用いると、溶融シリカ毛細管を用いたキャピラリーの内壁のシラノール基(Si−OH)が解離し、負に帯電する。キャピラリー中に満たされた溶液中の陽イオンは、内壁表面近くに引き寄せられて電気二重層が形成される。この状態のキャピラリーの両端に電圧をかけると、陽イオンは陰極方向に移動し、それに伴ってキャピラリー内部の溶液全体が陽極から陰極方向に向かう。この流れを電気浸透流という。
2 誤
キャピラリーゾーン電気泳動とは、溶融シリカ製キャピラリーと中性の緩衝液を用いて、電気浸透流を発生させることで、電気泳動を行う方法である。本法では、陽イオン性物質は、電気浸透流(陰極方向への流れ)に加えて、陰極に引き寄せられる力の影響を受けながら泳動されるため、中性物質よりも速く泳動される。
3 誤
キャピラリーゲル電気泳動とは、キャピラリー内にゲル(ポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルなど)を充填し、電気泳動を行う方法である。本法では、充填されたゲルによる分子ふるい効果により、ゲルの抵抗を受けにくい分子サイズの小さい順に検出される。
4 正
キャピラリー等電点電気泳動では、緩衝液に両性電解質(ポリアミノカルボン酸など)を溶解し、pH勾配を形成させて、電気泳動を行う方法である。本法では、試料タンパク質がそれぞれの等電点と同じpHの位置で泳動が停止ため、タンパク質などの分離が可能である。
5 正
ミセル動電クロマトグラフィーとは、泳動液に陰イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなど)を添加し、電気泳動を行う方法である。本法では、疎水性の中性物質は、陰イオン性界面活性剤が形成するミセルに取り込まれやすく、負に帯電しやすい。また、親水性の中性物質は、陰イオン性界面活性剤が形成するミセルに取り込まれにくく、負に帯電しにくい。この差により、中性物質の相互分離が可能である。
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