薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 220,221
35歳女性。最近、日中頻尿と尿意切迫感で不眠が続いたので近医を受診した。過活動膀胱症状質問票(OABSS)トータルスコア10点の中等症と診断され、処方1による薬物治療を受けていた。再診時、OABSSトータルスコアは6点と改善したが尿意切迫感が十分に改善しないため、処方2が追加された。
再診時の主な患者情報:血圧130/60 mmHg、脈拍数60拍/分、消化器症状なし、肝機能・腎機能正常、電解質異常なし。現在、妊娠はしていない。
再診7日後、薬剤師が継続的な服薬状況と患者状態を確認し、服薬指導を行うため、患者宅に電話した。
問220(実務)
副作用症状としてこの患者に起こる可能性が最も低いのはどれか。1つ選べ。
1 血圧上昇
2 尿閉
3 ふらつき、めまい
4 便秘
5 唾液の分泌過多
問221(物理・化学・生物)
この患者の下部尿路症状を改善させる生理的変化として、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 膀胱排尿筋が収縮する。
2 膀胱排尿筋が弛緩する。
3 内尿道括約筋が弛緩する。
4 外尿道括約筋が収縮する。
5 外尿道括約筋が弛緩する。
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問220 解答 5
本患者は過活動膀胱の中等症と診断され、処方1のソリフェナシンコハク酸塩錠で治療されていたが、症状の改善が十分に認められなかったため、処方2のミラベグロン錠が追加となった。処方1のソリフェナシンコハク酸塩錠(抗コリン薬)は、膀胱排尿筋の過緊張状態を抑制し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善する。副作用として抗コリン作用による副交感神経緊張低下に基づく、心機能亢進に伴う高血圧、動悸(めまい、ふらつきなど)、消化管症状として、口渇や便秘、泌尿器症状として排尿障害(尿閉など)を認める。また、処方2のミラベグロン錠(アドレナリンβ3受容体刺激薬)は、膀胱平滑筋のβ3アドレナリン受容体を刺激し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善する。副作用として交感神経緊張亢進に基づく、心機能亢進に伴う高血圧、動悸(めまい、ふらつきなど)、消化管症状として、口渇や便秘、泌尿器症状として排尿障害(尿閉など)を認める。よって、本患者に起こる可能性が最も低い副作用症状は、唾液の分泌過多である。
問221 解答 2
処方1のソリフェナシンコハク酸塩錠は、膀胱排尿筋において、ムスカリンM3受容体拮抗作用を示すことにより、膀胱の過緊張状態を抑制し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善する。また、追加された処方2のミラベグロン錠は、膀胱平滑筋のアドレナリンβ3受容体を刺激し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善する。よって、本患者の下部尿路症状を改善させる生理的変化として、「膀胱排尿筋が弛緩する」が適切である。
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解説動画1 ( 09:11 )
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