薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 228,229
70歳男性。自宅にて、39℃の発熱及び全身倦怠感を認め、同日中に呼吸困難となったため、家族が救急搬送を依頼した。救急病院に到着後、インフルエンザウイルスの迅速抗原検出キットにて検査したところ、B型陽性であり、インフルエンザウイルス感染症と診断された。なお、インフルエンザワクチンは未接種だった。また、本人からは高熱による頭痛の訴えがあった。救命救急センター担当医師と薬剤師は、治療方針について、カンファレンスを実施した。
問228(実務)
この患者への対応について、薬剤師が提案する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 レボフロキサシン水和物錠の投与
2 インフルエンザワクチンの接種
3 アセトアミノフェン静注液の投与
4 ペラミビル水和物注射液の投与
5 アマンタジン塩酸塩錠の投与
問229(衛生)
この患者の家族から、今後のインフルエンザワクチン接種について薬剤師に質問があった。次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 この患者が予防接種を受ける場合、インフルエンザは予防接種法におけるA類疾病に分類される。
2 この患者に対するインフルエンザワクチンの接種にかかる費用は、公的補助の対象とはならない。
3 インフルエンザワクチンの接種においては、鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーがある場合には注意が必要である。
4 インフルエンザワクチンの接種後、この患者に健康被害が生じた場合は、予防接種法に基づいた予防接種健康被害救済制度により救済措置を受けることができる。
5 インフルエンザワクチンは弱毒化ワクチンなので、ワクチン接種によりインフルエンザを発症することがある。
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問228 解答 3、4
1 誤
レボフロキサシン水和物錠は抗菌薬であり、ウイルス感染症であるインフルエンザに適応はない。そのため、担当医師にレボフロキサシン水和物錠投与の提案は適切ではない。
2 誤
インフルエンザワクチンは、インフルエンザに罹患する前に接種することにより、疾病の予防を行うものである。よって、すでにインフルエンザに罹患している患者の治療において、インフルエンザワクチン投与の提案は適切ではない。
3 正
小児や高齢者のインフルエンザに伴う発熱に対してはアセトアミノフェンを使用することが推奨されているため、担当医師にアセトアミノフェン静注液投与の提案は適切である。
4 正
ペラミビル水和物注射液は、A型又はB型インフルエンザウイルス感染症に適応がある。また、本患者は呼吸困難な状態にあり、経口剤や吸入剤などのインフルエンザ治療薬の使用が困難であると考えられるため、担当医師にペラミビル水和物注射液投与の提案は適切である。
5 誤
アマンタジン塩酸塩錠は、A型インフルエンザウイルス感染症に適応があり、B型インフルエンザエンザ感染症には適応がない。そのため、担当医師にアマンタジン塩酸塩錠投与の提案は適切ではない。
問229 解答 3、4
予防接種のうち、予防接種法で定める予防接種にはA類疾病とB類疾病があり、その他の予防接種は任意接種となる。
1 誤
予防接種法において、65歳以上を対象としたインフルエンザの予防接種は定期接種のB類疾病に分類されている。本患者の年齢は70歳であるため、インフルエンザはB類疾病となる。
2 誤
本患者は定期接種であるため、市町村による公的補助の対象となる。なお、任意接種は、市町村による公的補助の対象とはならない。
3 正
インフルエンザワクチンを製造する際、インフルエンザウイルスを増幅する必要があり、その感染細胞として鶏卵が利用されるため、ワクチンにも微量の鶏卵が残存する。そのため、ワクチン接種の際、鶏卵アレルギーをもつものにまれにアレルギー症状が現れることがある。故に、インフルエンザワクチンの接種においては、鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーがある場合には注意が必要である。
4 正
本患者のインフルエンザの予防接種において、健康被害が生じた場合、定期接種による健康被害のため、予防接種健康被害救済制度により救済措置を受けることができる。なお、任意接種により健康被害が生じた場合は、医薬品副作用被害救済制度により救済措置を受けることができる。
5 誤
インフルエンザワクチンは不活化ワクチンであるため、ワクチン接種によりインフルエンザを発症することはない。
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