薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 234,235
74歳女性。身長160 cm、体重50 kg。飲酒及び喫煙歴はない。てんかんの既往があり、以下の薬剤を10年以上服用し、外来受診時には脳波検査を行ってきた。1年以上、発作は起こっていない。今回、市が主催する骨密度検診で、骨密度の低下が指摘されたので、かかりつけの医療機関を受診し血液検査と骨密度測定を実施した。その結果をもとに、医師と薬剤師がカンファレンスを行った。
(検査値)
血清クレアチニン値1.6 mg/dL、AST 32 IU/L、ALT 29 IU/L
ALP 410 IU/L、補正Ca値7.0 mg/dL
intact−PTH 92 pg/mL(標準値:10〜65 pg/mL)
フェニトイン血中濃度10 µg/mL
腰椎骨密度測定値 若年成人平均値(YAM)の65%
問234(衛生)
この患者の病態に関連するビタミンやミネラルについての記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 intact−PTHが高値を示していることから、血中カルシウム濃度を正常に維持するために副甲状腺の機能が亢進していることがわかる。
2 血清カルシウム値の低下は、活性型ビタミンDによるカルシウム吸収促進能が低下したことによるものである。
3 副甲状腺の機能が亢進したことにより、腎臓でのカルシウム排泄が促進され、血清カルシウム値が低下している。
4 ビタミンKを含む食品を摂取することで、腸管からのカルシウム吸収を促進することができる。
5 ホウレンソウなどに含まれるフィチン酸と一緒にカルシウムを摂取することで、効率よくカルシウムを吸収することができる。
問235(実務)
薬剤師が医師に処方提案する薬剤として、適切なのはどれか。1つ選べ。
1 エルカトニン注
2 アルファカルシドールカプセル
3 イバンドロン酸ナトリウム水和物注
4 アレンドロン酸ナトリウム水和物錠
5 デノスマブ皮下注
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問234 解答 1、2
解説本患者の血液検査、及び骨密度測定の結果、血清クレアチニン値が1.6 mg/dLと高値を示しており、腎機能障害により、活性型ビタミンDの生成が低下している。その結果、腸管からのカルシウムの吸収が抑制され、低カルシウム血症(補正Ca値7.0 mg/dL(標準値:8.5〜10.0 mg/dL))を伴い、二次的に副甲状腺機能が亢進(intact−PTH 92 pg/mL(標準値:10〜65 pg/mL))している。
1 正
前記参照
2 正
前記参照
3 誤
副甲状腺の機能が亢進すると、パラトルモン(PTH)の分泌に伴い、骨吸収や腎臓でのカルシウムの再吸収の促進が起こり、血清カルシウムが増加する。
4 誤
ビタミンDに関する記述である。ビタミンDは肝臓、腎臓で水酸化を受け、活性型ビタミンDとなり、腸管からのカルシウム吸収を促進する。
5 誤
フィチン酸は腸管内でカルシウムと不溶性の塩を形成することで、腸管からのカルシウムの吸収が阻害される。
問235 解答 2
1 不適切
エルカトニン注は骨粗しょう症における疼痛に適応がある。本患者は骨痛を訴えてないため、エルカトニン注の処方は不適切である。
2 適切
アルファカルシドールカプセルは、肝臓での水酸化を受け、活性型ビタミンD3となるビタミンD3製剤であり、腎障害に伴い腸管からのカルシウム吸収が低下した本患者への処方提案として適切である。
3 不適切
イバンドロン酸ナトリウム水和物注は、骨粗しょう症に適応を有するが、低カルシウム血症の患者には禁忌となっているため、本患者の処方提案として不適切である。
4 不適切
アレンドロン酸ナトリウム水和物錠は、骨粗しょう症に適応を有するが、低カルシウム血症の患者には禁忌となっているため、本患者の処方提案として不適切である。
5 不適切
デノスマブ皮下注は、骨粗しょう症に適応を有するが、低カルシウム血症の患者には禁忌となっているため、本患者の処方提案として不適切である。
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