薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 238,239
10月14日(月曜日)に小学校において、50名の児童が発熱・嘔吐・下痢の症状で欠席し、翌日にも同様の症状でさらに65名が欠席し児童の多くが病院を受診しているとの連絡が保健所にあった。早速、これらの患者のうち、60名の検体について検査を行ったところ、48名の検体から同一の病因物質を検出した。患者らの共通食は学校給食のみであり、10月11日(金曜日)に遠足のために給食を食べなかった学年に有症者がいないことから、給食が食中毒の原因と断定した。なお、衛生検査用に冷凍保存されていた同じ給食を調べた結果、原材料の鶏肉からも同じ病因物質を検出した。これを顕微鏡で観察したところ、写真の様に細長い、らせん状の形態を示していた。
問238(衛生)
下図は、病因物質(A〜E)による食中毒の患者数と事件数の年次別推移を示したものである。この給食による食中毒の病因物質はどれか。1つ選べ。
1 病因物質A
2 病因物質B
3 病因物質C
4 病因物質D
5 病因物質E
問239(実務)
今回、病院を受診した患者の一部には、重篤な食中毒症状がみられた。その患者に投与すべき薬剤として、適切なのはどれか。1つ選べ。
1 ロペラミド塩酸塩カプセル
2 5%ブドウ糖加酢酸リンゲル液
3 アトロピン硫酸塩注射液
4 d−クロルフェニラミンマレイン酸塩注射液
5 ブチルスコポラミン臭化物注射液
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問238 解答 2
本患者の症例において、以下3点からカンピロバクターによる食中毒と推測することができる。
①「潜伏期間が3日」
②「原因食品が鶏肉」
③「顕微鏡像がらせん型桿菌」
1 誤
病因物質Aは、ノロウイルスである。2016〜2018年における、年間の患者数は約8,500人〜約11,000人、年間の発生件数は、約220〜350件である。食中毒の中で、年間の患者数が最も多いのが特徴である。
2 正
病因物質Bは、カンピロバクターである。2016〜2018年における、年間の患者数は約2,000人〜約3,200人、年間の発生件数は、約320〜340件である。患者数、発生件数ともに細菌性食中毒の中では最も多い。
3 誤
病因物質Cは、ウェルシュ菌である。2016〜2018年における、年間の患者数は約1,200人〜約2,300人、年間の発生件数は、約30件である。偏性嫌気性菌のため、大きな鍋で調理するようなシチューやカレーにより食中毒が多く、特に学校給食で見受けられる。そのため、1件あたりの食中毒患者が多いのが特徴である。
4 誤
病因物質Dは、腸管出血性大腸菌である。2016〜2018年における、年間の患者数は約8,500人〜約11,000人、年間の発生件数は、約15〜30件である。
5 誤
病因物質Eは、サルモネラである。2016〜2018年における、年間の患者数は約600人〜約1,200人、年間の発生件数は、約20〜35件である。
問239 解答 2
カンピロバクターによる食中毒と診断された際の治療方針としては、抗菌薬を使用することはほとんどなく、脱水症状を防止するなどの対症療法を行いながら自然治癒させていくのが基本となる。
1 誤
ロペラミド塩酸塩カプセルは止瀉剤であるため、感染による下痢を起こしている患者に使用すると治療期間が延長することがあるため、本患者に投与する薬剤として適切ではない。
2 正
5%ブドウ糖加酢酸リンゲル液は、食中毒での下痢や嘔吐によって失われた細胞外液の補給や補正に用いられるため、本患者に投与する薬剤として適切である。
3 誤
アトロピン硫酸塩注射液やブチルスコポラミン臭化物注射液は抗コリン薬であり、胃腸運動抑制作用を有し、カンピロバクターの体外への排出を遅らせてしまうため、本患者に投与する薬剤として適切ではない。
4 誤
d−クロルフェニラミンマレイン酸塩注射液は抗コリン作用と抗ヒスタミン作用をもつ薬剤であり、胃腸運動抑制作用を有し、カンピロバクターの体外への排出を遅らせてしまうため、本患者に投与する薬剤として適切ではない。
5 誤
解説3参照
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