薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 254,255
45歳男性。体重45 kg。10年前に全結腸型潰瘍性大腸炎と診断され、寛解・再燃を繰り返した後、メサラジン1,500 mg/日、アザチオプリン50 mg/日で寛解維持されていた。2ヶ月前より大腸炎が再燃し、上の処方で効果不十分であったため、以下の処方にて寛解導入することになった。
問254(実務)
薬剤師のこの患者への説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 処方1の薬剤は血中濃度を測定しながら服用カプセル数を調節します。
2 処方1の薬剤は腎障害が起こりやすいので、尿量の減少などがあれば薬剤師に相談してください。
3 処方1の薬剤は低血糖になりやすいので、異常な空腹感や冷や汗、動悸があるときはすぐに糖分を摂取してください。
4 処方2の薬剤は今回のみの使用で終了します。
5 処方2の薬剤の使用直後に、まれにふらつきや息苦しさを感じることがありますが、しばらく安静にすると自然に治まります。
問255(薬理)
処方1及び処方2のいずれかの薬物に期待される効果の機序はどれか。2つ選べ。
1 TNF−αに結合して、TNF−αとその受容体の結合を阻害する。
2 ヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害して、サイトカイン受容体を介した細胞内情報伝達を抑制する。
3 ロイコトリエンの産生を阻害して、白血球の組織への浸潤を抑制する。
4 プリン塩基の合成を阻害して、リンパ球の増殖を抑制する。
5 カルシニューリンを阻害して、T細胞におけるIL−2などのサイトカイン産生を抑制する。
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問254 解答 1、2
1 正
タクロリムスカプセルを潰瘍性大腸炎に用いる場合、血中トラフ濃度をモニタリングしながら投与量を調節することとされている。
2 正
タクロリムスカプセルは、腎障害の発現頻度が高いので、頻回に臨床検査(BUN、クレアチニンクリアランスなど)を行うなど患者の状態を十分に観察することとされている。
3 誤
タクロリムスカプセルは、高血糖などの膵機能障害の発現頻度が高いので、頻回に臨床検査(血液検査、空腹時血糖など)を行うなど患者の状態を十分に観察することとされている。
4 誤
アダリムマブ(遺伝子組換え)皮下注は、潰瘍性大腸炎に使用する場合、成人にはアダリムマブ(遺伝子組換え)として初回に160 mgを、初回投与2週間後に80 mgを皮下注射する。初回投与4週間後以降は40 mgを2週に1回皮下注射することとされているため、今回の処方は初回投与分であり、間欠的に投与する必要がある。
5 誤
アダリムマブ(遺伝子組換え)皮下注は、重大な副作用として、まれにふらつきや息苦しさを感じるアナフィラキシー等の重篤なアレルギー反応があらわれることがある。アナフィラキシー様症状が出た場合は、投与を中止し、適切な処置を行う必要があるため、医師や薬剤師に連絡するように指導する。
問255 解答 1、5
1 正
処方2のアダリムマブに関する記述である。アダリムマブは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)と特異的に結合し、TNF−αの細胞膜受容体への結合を阻害することで、TNF−αの活性を阻害するため、潰瘍性大腸炎に用いられる。
2 誤
トファシチニブなどに関する記述である。トファシチニブは、ヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害し、JAKによるサイトカイン受容体を介した細胞内情報伝達を抑制し、免疫反応を抑制するため、潰瘍性大腸炎に用いられる。
3 誤
メサラジンなどに関する記述である。メサラジンは、ロイコトリエンB4(LTB4)の産生を阻害して、白血球の組織への浸潤を抑制するため、潰瘍性大腸炎に用いられる。
4 誤
アザチオプリンなどに関する記述である。アザチオプリンは、生体内で代謝されてメルカプトプリンになり、細胞内に取り込まれてチオイノシン酸となることで、プリン塩基の合成を阻害して、リンパ球の増殖を抑制するため、潰瘍性大腸炎に用いられる。
5 正
処方1のタクロリムスに関する記述である。タクロリムスは、カルシニューリンを阻害して、T細胞におけるIL−2などのサイトカイン産生を抑制するため、潰瘍性大腸炎に用いられる。
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