薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 280,281
32歳女性。全大腸型潰瘍性大腸炎と診断され、プレドニゾロンで加療していたが、再燃を繰り返したため、プレドニゾロンをインフリキシマブのバイオシミラー製剤に変更したところ軽快した。インフリキシマブに変更して6ヶ月目に全身倦怠感と顔面(頬部)の広範な紅斑を認め、TNF阻害薬誘発性のループス様症状と診断された。
問280(薬剤)
インフリキシマブのバイオシミラーに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1 先行バイオ医薬品の欠点を改良した完全なヒト化抗体である。
2 先行バイオ医薬品と同一の糖鎖を有する。
3 先行バイオ医薬品と同等/同質の安全性、有効性を有する。
4 臨床試験において、生物学的同等性試験による評価が必要である。
5 先行バイオ医薬品と同一の細胞を用いて製造される。
問281(実務)
ループス様症状は、インフリキシマブ投与の中止と高用量のプレドニゾロン投与により軽快した。このとき、消化性潰瘍の予防として使用されたのはどれか。1つ選べ。
1 メサラジン
2 アレンドロン酸
3 フェブキソスタット
4 エトドラク
5 ランソプラゾール
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問280 解答 3
バイオシミラー(バイオ後続品)とは、国内で既に新有効成分含有医薬品として承認されたバイオテクノロジー応用医薬品(先行バイオ医薬品)と同等/同質の品質、安全性及び有効性を有する医薬品として、異なる製造販売業者により開発される医薬品のことである。一般に、品質、安全性及び有効性について、先行バイオ医薬品との比較から得られた同等性/同質性を示すデータ等に基づき開発される。バイオシミラーは、一般に先行バイオ医薬品とは異なる細胞基材、遺伝子発現構成体、培養・糖鎖工程、製剤化工程を用いて製造されるため、アミノ酸配列が先行バイオ医薬品と同じだとしても、全く同一の構造を製造することは困難である。
なお、同等性/同質性とは、先行バイオ医薬品に対して、バイオシミラーの品質特性がまったく同一であるということを意味するのではなく、品質特性において類似性が高く、かつ、品質特性に何らかの差異があったとしても、最終製品の安全性や有効性に有害な影響を及ぼさないと科学的に判断できることを意味する。
1 誤
バイオシミラーは、先行バイオ医薬品と同等/同質の品質、安全性及び有効性を有する医薬品であり、先行バイオ医薬品の欠点を改良した医薬品ではない。また、インフリキシマブは、完全なヒト化抗体ではなく、キメラ型抗体であるため、そのバイオシミラーも同様にキメラ型抗体である。
2 誤
バイオシミラーは、一般的に先行バイオ医薬品と同一の糖鎖を有しているとは限らない(前記参照)。
3 正
前記参照
4 誤
後発医薬品(ジェネリック医薬品)が、先発医薬品との生物学的同等性が示されれば、医薬品として承認されるのに対し、バイオ後続品は、新薬に相当する承認申請資料(臨床試験成績に関する資料等)の提出が必要とされ、先行バイオ医薬品と比較して品質、有効性及び安全性が同等/同質であることで、医薬品として承認される。
5 誤
バイオシミラーは、一般に先行バイオ医薬品とは異なる細胞を用いて製造される(前記参照)。
問281 解答 5
インフリキシマブを投与後、全身性エリテマトーデス(SLE)と類似した症状であるTNF阻害薬誘発性のループス様症状が生じる場合がある。今回、インフリキシマブ投与の中止と高用量のプレドニゾロン投与により軽快したが、高用量のプレドニゾロンの副作用である消化性潰瘍を発症する可能性がある。その予防として、プロトンポンプ阻害薬であるランソプラゾールが使用される。
1 誤
メサラジンは、潰瘍性大腸炎などの治療に使用されるが、消化性潰瘍の予防として使用されない。
2 誤
アレンドロン酸は、骨粗鬆症の治療に使用されるが、消化性潰瘍の予防として使用されない。
3 誤
フェブキソスタットは、痛風や高尿酸血症の治療に使用されるが、消化性潰瘍の予防として使用されない。
4 誤
エトドラクは、関節リウマチなどの治療に使用され、副作用に消化性潰瘍があるため、消化性潰瘍の予防として使用されない。
5 正
前記参照
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