薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 318,319
75歳女性。一人暮らし。数年来処方1で治療していた。1ヶ月前に家の廊下で転倒し腰を痛め、痛くて眠れないとの訴えがあったため、処方2が追加となった。本日の服薬指導時に患者は「腰はもう治り、痛みもない。夜もよく眠れるようになってよかった。しかし、腰を打ってからほとんど家で横になっている。食欲がなくて、水もあまり飲んでいないためか、トイレに行く回数が減っている。」と話していた。また、薬剤師は会話中に患者の手が震えており、両下肢にむくみがあることに気づいた。なお、血圧は正常にコントロールできている。
問318(実務)
医師への処方見直しや確認の提案に向け、薬剤師がアセスメントする項目として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 アムロジピン錠の長期服用による乏尿
2 酸化マグネシウム錠の長期服用による錐体外路症状
3 メトクロプラミド錠の長期服用による錐体外路症状
4 ロキソプロフェンNa錠による腎機能低下
5 ゾルピデム酒石酸塩錠による乏尿
問319(法規・制度・倫理)
このように、追加された処方薬が漫然と継続されることで、薬剤の副作用や重複投与の可能性、さらには、服用できない薬剤の増加による残薬の問題など、ポリファーマシーに関連した様々な課題が発生している。これまで、ポリファーマシーの対策として、国が実施した施策はどれか。2つ選べ。
1 「高齢者の医薬品適正使用の指針」の作成を行った。
2 ポリファーマシーによる問題がある患者数を半減するとの数値目標を設定した。
3 医療保険上の処方箋に記載できる薬剤の剤数の上限を設けた。
4 患者の服用する薬剤を減らした場合の取組みについて診療報酬で評価した。
5 同時に使用する薬剤の剤数が10を超えた分の薬剤費の自己負担割合を増やした。
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問318 解答 3、4
本患者が服用中の薬剤(処方1及び処方2)について以下に示す。
【処方1】
・アムロジピン錠
高血圧症に用いられるジヒドロピリジン系Ca2+チャネル遮断薬である。また、副作用として降圧に伴うふらつきやめまい、肝障害、便秘、嘔吐、消化不良等の消化器症状を起こすことがある。
・酸化マグネシウム錠
便秘に用いられる緩下薬であり、本処方はアムロジピン錠の副作用の便秘の改善を目的に用いられている。
・メトクロプラミド錠
嘔吐、消化不良等の消化器症状に用いられるドパミンD2受容体遮断薬である。また、副作用として錐体外路症状や高プロラクチン血症を起こすことがある。
【処方2】
・ロキソプロフェンNa錠
炎症に伴う腫れや痛みに用いられる非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であり、本患者の腰痛に対して処方されていると考察できる。また、副作用として急性腎障害や消化性潰瘍を起こすことがある。
・ゾルピデム酒石酸塩錠
不眠に用いられる非ベンゾジアゼピン系催眠薬である。また、副作用として一過性前向性健忘や長期連用により依存を起こすことがある。
本患者は、食欲不振、尿量減少、手の震え、両下肢のむくみを訴えていることから、メトクロプラミドによる錐体外路症状及びロキソプロフェンNaによる急性腎障害や消化性潰瘍を生じた可能性が疑われる。
したがって、医師への処方見直しや確認の提案に向け、薬剤師がアセスメントする項目としては選択肢3及び選択肢4が適切である。
問319 解答 1、4
ポリファーマシーとは、「poly(多くの)」+「pharmacy(調剤)」からなる造語であるが、単に服用する薬剤数が多いことだけでなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態のことをいう。
1 正
「高齢者の医薬品適正使用の指針」は、高齢者の薬物療法の適正化(薬物有害事象の回避、服薬アドヒアランスの改善など)を目指し、国(厚生労働省)が「高齢者医薬品適正使用検討会」を設置し、その検討会の議論を経て作成されている。
2 誤
ポリファーマシーによる問題がある患者数に関しての具体的な数値目標は設定されていない。
3 誤
国は、医療保険上の処方箋に記載できる薬剤の剤数の上限は設けていない。
4 正
入院時には処方の一元的な管理や処方変更後の患者の状態が確認できることから、入院時のポリファーマシー解消の取組等を診療報酬で評価する仕組みとして、薬剤総合評価調整加算などがある。
5 誤
薬剤が増えたとしても、患者の自己負担割合が変化することはない。
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