薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 322,323
60歳代の男性が薬剤師会が主催する健康相談会にやってきた。相談内容は以下のとおりである。
「昔一緒に働いていた友人が悪性中皮腫っていうがんになった。アスベスト(石綿)が原因だと聞いた。最近、自分も同じような症状がでてきて心配だ。」
問322(実務)
アスベスト(石綿)による健康被害を疑った薬剤師の対応として、適切なのはどれか、2つ選べ。
1 潜伏期間が比較的短いため、友人と働いていた時期がいつなのかを確認した。
2 友人と働いていた場所が、工事現場などの曝露のおそれがある場所なのか確認した。
3 呼吸困難、咳、胸痛などの自覚症状があるか確認した。
4 飛沫感染によって他人にうつすおそれがあることを説明した。
5 吸い込んだアスベスト(石綿)による一過性の炎症反応のため、心配いらないと説明した。
問323(法規・制度・倫理)
この男性に医療機関への受診勧奨を行ったところ、「今でも年金でぎりぎりの生活をしているのに治療費まで出せないよ」と言われ、薬剤師は、「アスベストが原因での病気の治療は、公費負担医療制度の対象になる可能性がある」と説明した。公費負担医療制度の内容として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 税金を基礎として医療費給付を行う。
2 高額な医療が必要と判断された場合に利用する。
3 国や地方自治体が運用する。
4 社会保険方式による制度である。
5 保険薬局であれば、どこでも取り扱うことができる。
- REC講師による詳細解説! 解説を表示
-
問322 解答 2、3
アスベスト(石綿)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で、その繊維が極めて細いため、研磨機、切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹付け石綿などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が吸入してしまうおそれがある。そのため、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫の原因になるといわれ、肺がんを起こす可能性がある。また、アスベストによる健康被害は、アスベストを扱ってから長い年月を経て出て来ると言われ、例えば、悪性中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後、発病することが多いとされている。
1 誤
アスベストによる健康被害は、長い潜伏期間の後、発病することが多いため、友人と働いていた時期がいつなのかを確認する必要がある。
2 正
アスベストの曝露要因は、職業性のものが多いとされており、アスベストを使用した建築物等の解体工事現場などで健康被害が生じることから、原因特定のため確認が必要である。
3 正
アスベストの曝露による健康被害は、呼吸困難、咳、胸痛などがあるため、これらの症状を確認する必要がある。
4 誤
アスベストは、けい酸塩鉱物であり、飛沫感染は起こさない。
5 誤
男性は悪性中皮腫になった友人と同じような症状が最近出ていると訴えているため、医療機関への受診勧奨をする必要がある。
問323 解答 1、3
公費負担医療制度は、医療保険制度とは別に、国や地方自治体の税金を基礎として、医療費給付を行う制度である。以下に公費負担の種類と公費負担に関与する主な法律を示す。
1 正
前記参照
2 誤
高額な医療が必要と判断された場合に利用する制度は、公費負担医療制度ではなく高額療養費制度である。
3 正
公費負担医療制度は、税金を基礎として医療費給付を行うため、国や地方自治体が運用する制度である。
4 誤
社会保険方式は、被保険者(加入者)からの保険料を主な財源として行われる方式であり、医療保険制度、介護保険制度、年金保険制度が該当する。しかし、公費負担医療制度は税金を基礎として医療給付を行う制度であるため、社会保険方式による制度ではない。
5 誤
公費負担医療を担当する薬局等になるためには、原則として健康保険法に基づく保険薬局の指定とは別に、実施する公費負担医療に対応した法的手続きが必要になる。従って、本患者に対する公費負担医療制度を利用した調剤を行う場合には、保険薬局が石綿健康被害救済法に基づく指定を受けなければならない。
- この過去問解説ページの評価をお願いします!
-
評価を投稿