薬剤師国家試験 令和04年度 第107回 - 一般 実践問題 - 問 328
45歳女性。身長152 cm、体重40 kg。アルコールの慢性的な大量摂取に伴う慢性肝炎治療のため、これまで入退院を繰り返してきた。今回、Child−Pugh分類でB(8点)の肝硬変と診断され、治療目的のため入院となった。
(入院時の検査値等)
脳症Ⅱ度、腹水2 L、総ビリルビン2.5 mg/dL、血清アルブミン3.0 g/dL、
PT−INR 2.0、AST 85 IU/L、ALT 80 IU/L、γ−GTP 21 IU/L、
アンモニア420 µg/dL、血清クレアチニン値0.7 mg/dL、
eGFR 71.0 mL/min/1.73 m2、Na 142 mEq/L、K 4.8 mEq/L
(入院時の持参薬)
レボカルニチン内用液
プレドニゾロン錠
ウルソデオキシコール酸錠
ラクツロースシロップ
レバミピド錠
脳症及び腹水貯留の改善が思わしくないことから、追加を提案する薬剤として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 ラクチトール水和物散
2 バンコマイシン散
3 リファキシミン錠
4 トルバプタン錠
5 アセタゾラミド錠
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解答 解なし
肝性脳症は、腸管内で産生されたアンモニアが肝臓で解毒されず、血液脳関門を通過して脳に到達することで意識障害や羽ばたき振戦などの精神・神経症状を生じる症候群であり、治療には合成二糖類(ラクツロース、ラクチトール)や腸管非吸収性抗菌薬(リファキシミン、カナマイシン、ポリミキシンB)、分岐鎖アミノ酸製剤が用いられる。選択肢の薬剤のうち、肝性脳症の治療に用いられるのは、ラクチトール水和物散とリファキシミン錠であるが、本患者はすでに合成二糖類のラクツロースシロップを服用しているため、作用機序の異なるリファキシミン錠の追加を提案すべきである。
腹水貯留とは、肝臓のアルブミン合成能の低下に伴う血漿膠質浸透圧低下により生じ、治療には利尿薬やアルブミン製剤が用いられる。選択肢の薬剤のうち、腹水貯留の治療に用いられるのは、トルバプタン錠であるが、トルバプタン錠はループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留等に用いる薬剤である。本患者は利尿薬を服用していないため、まずはフロセミドやスピロノラクトンなどの利尿薬の追加を提案すべきである。なお、アセタゾラミド錠は利尿薬であるが、血中アンモニア濃度を上昇させ、肝性昏睡を誘発するおそれがあるため、高度の肝機能障害のある患者には投与禁忌である。
以上より、追加を提案する薬剤として適切なものがリファキシミン(選択肢3)の1つだけであるため、選択肢が不適切で正解が得られないため全員を正解として採点された。
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解説動画1 ( 13:05 )
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