薬剤師国家試験 令和05年度 第108回 - 一般 実践問題 - 問 196,197
72歳男性。身長173 cm、体重63 kg。タール便があり、近医にて内視鏡検査を施行したところ、胃噴門部に腫瘤を認め総合病院の消化器外科に紹介となった。精査の結果、胃がんStage Ⅳ、肝転移及び多発リンパ節転移と診断され、胃がんの一次治療としてS-1*/シスプラチン療法(SP療法)を導入することになった。そこで自宅にてS-1の服用を開始し(Day 1)、Day 8よりシスプラチン注射液を投与するため投与前日(Day 7)に入院となった。
*:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤
問196(実務)
SP療法の施行に関する記述のうち、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 シスプラチン注射液は5%ブドウ糖注射液で希釈する。
2 デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液、アプレピタントカプセルを投与するのはシスプラチン注射液の投与前日(Day 7)である。
3 シスプラチン注射液の投与翌日(Day 9)に、セロトニン5−HT1受容体遮断薬を投与する。
4 シスプラチン注射液の投与前(Day 8)に十分な量の輸液を投与する。
5 体重からシスプラチン注射液の投与量を算出する。
問197(物理・化学・生物)
SP療法に用いられる薬物及びその代謝物を水溶液としたとき、水溶液のモル電気伝導率が時間の経過とともに増大し、抗がん作用を発現するのはどれか。1つ選べ。
1 シスプラチン
2 テガフール
3 ギメラシル
4 オテラシルカリウム
5 フルオロウラシル
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問196 解答 4
1 誤
シスプラチン注射液は、5%ブドウ糖注射液などの塩化物イオン濃度の低い輸液で希釈してしまうと活性が低下するため、生理食塩液で希釈する。
2 誤
抗がん剤の中でシスプラチンは高度催吐性リスクに分類されるため、シスプラチン投与当日(Day 8)のシスプラチン投与前から、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液などのステロイド剤、アプレピタントカプセルなどのタキキニンNK1受容体遮断薬、パロノセトロンなどのセロトニン5−HT3受容体遮断薬の3剤の予防投与を開始する。
3 誤
解説2参照
4 正
シスプラチンの副作用である腎毒性を軽減するために、シスプラチンの投与前後に十分な量の輸液を投与する(ハイドレーション)。
5 誤
シスプラチン注射液の投与量は、患者の体重ではなく、体表面積から算出する。
問197 解答 1
水溶液のモル電気伝導率が増大するのは、水溶液中のイオンの数が増大することに起因する。選択肢の薬剤のうち、水溶液中のイオン数が時間の経過とともに増大すると考えられるのは、金属イオンを含有するシスプラチンとオテラシルカリウムである。このうち、シスプラチンは抗がん作用を発現するが、オテラシルカリウムはテガフールの消化管障害の軽減を目的とした薬剤であり、抗がん作用を発現しないため、水溶液のモル電気伝導率が時間の経過とともに増大し、抗がん作用を発現するのは、シスプラチンである。
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解説動画1 ( 07:52 )
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