薬剤師国家試験 令和05年度 第108回 - 一般 実践問題 - 問 230,231
28歳男性。勤務先のメッキ工場で、ビンに小分けしてあった液体を誤って飲用した。その直後に苦しがったため、近くにいた同僚が救急車を要請し、救急搬送された。来院時、頭痛、悪心、嘔吐及び頻脈を認めた。胃洗浄時に採取した胃内容物をシェーンバイン法により検査したところ、グアヤク試験紙が青色へ変化した。
問230(衛生)
この患者が摂取したと疑われる物質はどれか。1つ選べ。
1 ヒ素
2 トルエン
3 ジクロルボス
4 シアン化カリウム
5 n−ヘキサン
問231(実務)
この患者に用いる解毒剤として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 プラリドキシムヨウ化メチル(PAM)
2 硫酸アトロピン
3 ヒドロキソコバラミン
4 亜硝酸アミル
5 ジメルカプロール
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問230 解答 4
メッキ工場でビンに入っている液体を誤飲した後、頭痛、悪心、嘔吐及び頻脈を認めたことや、胃内容物がシェーンバイン法により陽性を示したことから、本患者はシアン化カリウムによる中毒だと考えられる。シアン化カリウムは、Fe3+と親和性が高く、細胞内のミトコンドリアに存在するシトクロムオキシダーゼに含まれるFe3+に結合し酵素活性を阻害することで内呼吸を停止させるため、頭痛や悪心、嘔吐などを引き起こす。
問231 解答 3、4
シアン化カリウムの解毒剤としては、亜硝酸アミル、亜硝酸ナトリウム、ヒドロキソコバラミン、チオ硫酸ナトリウムなどが用いられる。
亜硝酸アミルや亜硝酸ナトリウムは、ヘモグロビンのFe2+をメトヘモグロビンFe3+に酸化しシアンと結合させることで、シトクロムオキシダーゼとシアンとの結合を解離させる。
ヒドロキソコバラミンは、シアンと反応し、シアノコバラミンにすることで毒性を低下させる。
チオ硫酸ナトリウムは、ロダネーゼによりシアンと反応し、チオシアン酸にすることで毒性を低下させる。
1 誤
プラリドキシムヨウ化メチル(PAM)やアトロピンは、有機リン系殺虫剤の解毒剤である。有機リン系殺虫剤は、コリンエステラーゼ(ChE)をリン酸化し、アセチルコリン(ACh)の分解を阻害することによりAChが蓄積して中毒症状を起こす。PAMは、ChEのリン酸化を離脱させ、ChEの酵素活性を回復させる。また、アトロピンは、ムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断することで、過剰になったAChのムスカリン作用を抑制する。
2 誤
解説1参照
3 正
前記参照
4 正
前記参照
5 誤
ジメルカプロールは、ヒ素、水銀、鉛などの重金属の解毒剤であり、重金属とキレートを形成することで体外への排泄を促進する。
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解説動画1 ( 08:57 )
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