薬剤師国家試験 令和05年度 第108回 - 一般 実践問題 - 問 234,235
68歳男性。身長173 cm、体重65 kg。大動脈弁狭窄症に対する手術を行い集中治療室に入室した。術後2日目、患者は人工呼吸管理下、絶食下にあり、担当医より以下が処方された。
問234(実務)
処方1〜処方4に関する記述として適切なのはどれか。2つ選べ。
1 処方1及び処方2の10%ブドウ糖加酢酸維持液500 mLの熱量は約100 kcalである。
2 処方3の酢酸リンゲル液はナトリウムイオンを約130 mEq/L含有している。
3 処方1は貧血の予防目的で処方された。
4 処方4のセファゾリンナトリウムは手術創の緑膿菌感染の予防目的で処方された。
5 処方1及び処方2のファモチジンは、手術後の侵襲ストレスによる上部消化管出血の抑制目的で処方された。
問235(衛生)
処方1〜処方4の薬剤の成分のうち、欠乏により乳酸アシドーシスを起こすのはどれか。1つ選べ。
1 酢酸
2 チアミン
3 リボフラビン
4 アスコルビン酸
5 ナトリウム
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問234 解答 2、5
1 誤
処方1及び処方2の10%ブドウ糖加酢酸維持液500 mLに含まれるブドウ糖は共に50 gである。糖質のAtwater係数は4 kcal/gであるため、処方1及び処方2の10%ブドウ糖加酢酸維持液500 mLの熱量は、4 kcal/g×50 g = 200 kcalとなる。
2 正
処方3の酢酸リンゲル液は、細胞外液補充を目的に水・電解質を補給するものであり、酢酸リンゲル液の電解質濃度はNa+:130 mEq/L、K+:4 mEq/L、Ca2+:3 mEq/L、Cl-:109 mEq/L、CH3COO-:28 mEq/Lである。
3 誤
処方1は貧血の予防目的ではなく、エネルギー(10%ブドウ糖加酢酸維持液)及びビタミン補給(チアミン塩化物塩酸塩・リボフラビンリン酸エステルナトリウム・アスコルビン酸配合注射液)、手術後の侵襲ストレスによる上部消化管出血の予防(ファモチジン注射用)であると考えられる。
4 誤
セファゾリンナトリウムは、第一世代のセフェム系抗菌薬であり、緑膿菌に抗菌スペクトルをもたない。セファゾリンナトリウムは、手術創における皮膚に常在する黄色ブドウ球菌やレンサ球菌などによる感染予防を目的として処方されている。
5 正
処方1及び処方2のファモチジンは、手術後の侵襲ストレス(手術後に集中管理を必要とする大手術)による上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)の抑制目的で処方されている。
問235 解答 2
処方1〜処方4の薬剤の成分のうち、欠乏により乳酸アシドーシスを起こすのはチアミン(ビタミンB1)である。
チアミンは生体内で活性体のチアミンピロリン酸(TPP)に代謝され、TPPは、好気的条件下においてグルコースから生じたピルビン酸がアセチルCoAへ代謝される際(酸化的脱炭酸反応)の補酵素として関与する。チアミンが欠乏すると酸化的脱炭酸反応が進行せず、その結果、ピルビン酸が乳酸に代謝されることで乳酸アシドーシスを引き起こすことがある。
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