薬剤師国家試験 令和05年度 第108回 - 一般 実践問題 - 問 238,239
20歳男性。路上で意味不明なことを叫びながら暴れており、近隣住民が警察に通報した。警察官到着時、ろれつが回らず、痙れんを起こしたため救急要請した。救急隊到着時、頻脈と発汗を認め、興奮状態であった。救急病院に搬送され、この患者の尿を分析したところ覚醒剤及びその代謝物が検出された。
(来院時の状態)
血圧149/90 mmHg、心拍170拍/分、呼吸数60回/分、体温38.8℃、散瞳(左右6.0 cm)で対光反射は正常。発汗が著明、痙れんは消失、振戦あり。四肢の静脈に多数の注射痕あり。
問238(衛生)
この患者の尿中から検出されたと考えられる物質はどれか。2つ選べ。
問239(実務)
この患者の興奮状態を抑えるために使用される適切な薬剤はどれか。1つ選べ。
1 プロクロルペラジンメシル酸塩注
2 ジアゼパム注
3 フェニトインナトリウム注
4 ロクロニウム臭化物注
5 フルマゼニル注
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問238 解答 1、4
この男性は、頻脈、発汗などの交感神経興奮作用、中枢興奮作用が認められ、尿を分析したところ覚醒剤及びその代謝物が検出されたとのことから、覚醒剤を乱用したと考えられる。覚醒剤とは覚せい剤取締法で規定された物質で、アンフェタミン、メタンフェタミン及びその塩類を指し、尿中の分析対象は未変化体であるが、代謝物であるフェニルアセトンやノルエフェドリンも検出される。
1 正
フェニルアセトンの構造である。
2 誤
ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)の構造であり、麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)により麻薬に指定されている。
3 誤
2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5-T)の構造であり、過去に除草剤として使用されていたが、不純物としてダイオキシン類が含まれていたため現在は使用禁止である。
4 正
アンフェタミンの構造である。
5 誤
6-アセチルモルヒネの構造であり、ヘロインが加水分解されて生成する。
問239 解答 2
1 誤
プロクロルペラジンメシル酸塩注は、抗ドパミン作用により、術前、術後等の悪心、嘔吐に用いられる。
2 正
ジアゼパム注は、ベンゾジアゼピン(BZ)受容体に結合することで、GABAのGABAA受容体への親和性が増加し、GABAの作用が増強するため中枢抑制作用を示す。これにより、覚醒剤による過剰な中枢興奮作用の抑制に用いられる。
3 誤
フェニトインナトリウム注は、Na+チャネルを遮断しNa+の透過性を抑制することで中枢神経膜を安定化するため、てんかん発作などに用いられる。
4 誤
ロクロニウム臭化物注は、神経筋接合部のアセチルコリンNM受容体を遮断し、筋弛緩作用を示すことにより、麻酔時の筋弛緩などに用いられる。
5 誤
フルマゼニル注は、BZ受容体に結合しBZ系薬剤と拮抗することにより、BZ系薬剤による鎮静の解除及び呼吸抑制の改善に用いられる。
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解説動画1 ( 04:49 )
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