薬剤師国家試験 令和05年度 第108回 - 一般 実践問題 - 問 248,249
70歳男性。肺がんによる疼痛があり、以下の処方により、在宅で緩和ケアを行っている。本日、薬剤師が患者宅を訪問し、薬学的管理指導を実施した。
患者に痛みに関する聞き取りを行ったところ、「痛みのコントロールは良好だったが、3日前から同じ時間帯に突然強い痛みが繰り返し起こるようになった」との情報を得た。突然の痛みの頻度を患者に尋ねたところ、「次回のオキシコドン徐放錠を服用する約2時間前に痛みが出始めることが多く、オキシコドン塩酸塩水和物散の服用回数が5回以上になっている」との情報を得た。なお、処方薬による副作用の症状は出ていない。
問248(実務)
薬剤師は、医師に連絡し処方変更の協議を行った。提案すべき内容として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 オキシコドン塩酸塩水和物散を増量する。
2 オキシコドン徐放錠を増量する。
3 オキシコドン徐放錠からトラマドール徐放錠へ処方変更する。
4 ナルデメジントシル酸塩錠を減量する。
5 突出痛の再確認のため、さらに3日間同量で様子を見る。
問249(薬理)
処方されたいずれかの薬物の作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 電位依存性Ca2+チャネルのα2δサブユニットに結合することで、興奮性神経伝達物質の過剰な放出を抑制する。
2 オピオイドµ受容体を刺激することで、痛みの上位中枢への伝達を抑制する。
3 脊髄後角におけるセロトニン及びノルアドレナリンの神経終末への再取り込みを阻害することで、下行性疼痛抑制系を活性化する。
4 腸管に存在するオピオイドµ受容体を遮断することで、蠕動運動の低下を防ぐ。
5 腸上皮に存在するCl-チャネル2(ClC−2)を活性化することで、腸管内への水分分泌を促進する。
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問248 解答 2
処方薬のオキシコドン徐放錠10 mgは、オピオイド系鎮痛薬であり、がん性疼痛のコントロールに用いる。また、オキシコドン塩酸塩水和物散5 mgは速放性製剤であり、突出痛発現時のレスキュードーズとして用いる。
聞き取り内容に「3日前からオキシコドン徐放錠を服用する約2時間前に痛みが出始めることが多くオキシコドン塩酸塩水和物散5 mgを服用している。」とあることから、オキシコドン徐放錠10 mg 1日2回服用では痛みのコントロールが不十分であると考えられるため、オキシコドン徐放錠10 mgの増量などを検討する必要がある。
1 誤
本患者の突出痛は、オキシコドン徐放錠による疼痛コントロールが不十分であることが原因であり、レスキュードーズのオキシコドン塩酸塩水和物散の用量が問題ではない。そのため、オキシコドン塩酸塩水和物散の増量は不要である。
2 正
前記参照
3 誤
疼痛コントロールが不十分な時や副作用発現が強い時に、投与中のオピオイドから他のオピオイドに変更することをオピオイドスイッチングという。本患者は、現在のオキシコドン徐放錠の用量では疼痛コントロールが不十分であるが、増量することが可能であるため、オピオイドスイッチングは不要である。なお、疼痛コントロール不良時のオピオイドスイッチングは、原則強オピオイド同士の切り替えであるため、強オピオイドのオキシコドン徐放錠から弱オピオイドのトラマドール徐放錠への切り替えは適切ではない。
4 誤
ナルデメジントシル酸塩錠は、オピオイド誘発性便秘症に対して処方されているため、本患者の疼痛コントロールの対処としては適切ではない。
5 誤
がん性疼痛緩和では、患者の痛みが無くなる状態を常に維持し続け、QOLを向上させることが重要であるため、現在痛みが出ている状況で様子をみるのは適切ではない。
問249 解答 2、4
1 誤
プレガバリンに関する記述である。プレガバリンは、電位依存性Ca2+チャネルのα2δサブユニットに結合し、興奮性神経伝達物質の過剰な放出を抑制することで鎮痛作用を示す。
2 正
処方薬のオキシコドンに関する記述である。オキシコドンはオピオイド鎮痛薬であり、µ受容体を刺激することで、痛みの上位中枢への伝達を抑制することで鎮痛作用を示す。
3 誤
デュロキセチンなどの選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)に関する記述である。デュロキセチンは、脊髄後角におけるセロトニン及びノルアドレナリンの神経終末への再取り込みを阻害し、下行性疼痛抑制系を活性化することで、糖尿病性神経障害や慢性腰痛症などの疼痛緩和に用いられる。
4 正
処方薬のナルデメジンに関する記述である。ナルデメジンは、腸管に存在するオピオイドµ受容体を遮断することで、オピオイド鎮痛薬による蠕動運動の低下を防ぐため、オピオイド誘発性便秘症に用いられる。
5 誤
ルビプロストンに関する記述である。ルビプロストンは、腸上皮に存在するCl-チャネル2(ClC−2)を活性化することで、腸管内への水分分泌を促進するため、慢性便秘症に用いられる。
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解説動画1 ( 05:13 )
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