薬剤師国家試験 令和05年度 第108回 - 一般 実践問題 - 問 250,251
60歳女性。市町村が実施する検診で骨密度の低下が指摘され、近隣の整形外科を受診した。脆弱性骨折は見られなかったが、骨密度低下(腰椎骨密度測定値:若年成人平均値(YAM)の65%)のため骨粗しょう症と診断された。本日、以下の処方箋を持って初めて薬局を訪れた。
問250(薬理)
処方されたいずれかの薬物の作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 カルシトニン受容体を遮断することで、骨形成を促進する。
2 RANKL(NF−κB活性化受容体リガンド)に結合することで、骨形成を促進する。
3 ビタミンD受容体を刺激することで、腸管からのカルシウム吸収を促進する。
4 ファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害することで、骨吸収を抑制する。
5 エストロゲン受容体に結合してエストロゲン様作用を示すことで、骨吸収を抑制する。
問251(実務)
薬剤師が他の医療機関の受診の有無を確認したところ、今回の整形外科以外に内科に通院していることがわかった。お薬手帳を確認したところ、以下の薬剤が処方されていることが確認できた。なお、整形外科ではお薬手帳を提示していなかった。
この患者のお薬手帳の内容から、今回整形外科で処方された薬剤が禁忌となる疾患を内科で治療中である可能性が考えられた。その疾患はどれか。1つ選べ。
1 高カルシウム血症
2 深部静脈血栓症
3 パニック障害
4 胃食道逆流症
5 ナルコレプシー
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問250 解答 3、5
本患者は、骨粗しょう症と診断され、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)のバゼドキシフェンと、活性型ビタミンD3製剤のエルデカルシトールが処方されている。
1 誤
カルシトニン受容体を遮断することで、骨形成を促進する薬は存在しない。なお、破骨細胞のカルシトニン受容体を刺激し、破骨細胞による骨吸収を抑制する薬としてはエルカトニンがある。
2 誤
RANKL(receptor activator for nuclear factor−κB ligand)に結合することで、骨形成を促進する薬は存在しない。なお、破骨細胞の分化・誘導に関わるRANKLに結合し、破骨細胞の形成を抑制することで骨吸収を抑制する薬としてはデノスマブがある。
3 正
ビタミンD受容体を刺激することで、腸管からのカルシウム吸収を促進する薬は、エルデカルシトールなどの活性型ビタミンD3製剤である。エルデカルシトールは、ビタミンD受容体を刺激し、腸管からのカルシウム吸収及び腎でのカルシウム再吸収を促進することで、血中カルシウム濃度を上昇させる。
4 誤
ファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害することで骨吸収を抑制する薬は、リセドロン酸などのビスホスホネート製剤である。リセドロン酸は、骨のヒドロキシアパタイトに結合し破骨細胞に取り込まれることで、メバロン酸経路のファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害する。その結果、破骨細胞の機能を抑制し、骨吸収を抑制する。
5 正
エストロゲン受容体に結合してエストロゲン様作用を示すことで骨吸収を抑制する薬は、バゼドキシフェンなどの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)である。バゼドキシフェンは、骨組織のエストロゲン受容体に結合し、エストロゲン様作用を示すことで、閉経後骨粗しょう症の骨吸収を抑制する。
問251 解答 2
患者のお薬手帳の内容のうち、内科で処方されているリバーロキサバンは、深部静脈血栓症の治療及び再発防止に用いる薬剤であるため、本患者は深部静脈血栓症の治療中である可能性が考えられる。今回の整形外科での処方薬のうちバゼドキシフェンは、深部静脈血栓症の患者には投与禁忌である。
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