薬剤師国家試験 令和05年度 第108回 - 一般 実践問題 - 問 252,253
75歳男性。喫煙歴50年(1日40本程度)、血圧135/80 mmHg、脈拍68拍/分、整。数日前から胸の痛みや圧迫感、息苦しさを感じるようになった。今日の明け方、胸が強く締め付けられるような発作が生じたため医療機関を受診したところ、器質的冠動脈狭窄のない冠攣縮性狭心症と診断され治療が開始された。
治療開始後、発作の頻度は減ったが、軽い自覚症状が続いた。そのため、担当医は効果不十分と判定し、薬剤師と治療方針についてカンファレンスを実施した。
問252(実務)
薬剤師が医師に提案する追加薬剤として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 一硝酸イソソルビド錠
2 プロプラノロール塩酸塩錠
3 カルテオロール塩酸塩錠
4 ニコランジル錠
5 シルデナフィルクエン酸塩錠
問253(薬理)
処方薬及び前問で提案すべき追加薬物のいずれかの作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 一酸化窒素(NO)を遊離し、可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化することで、血管平滑筋を弛緩させる。
2 アドレナリンβ1受容体を遮断し、サイクリックAMP(cAMP)依存性プロテインキナーゼの活性化を抑制することで、洞結節の活動電位の発生頻度を減少させる。
3 ホスホジエステラーゼⅤを阻害し、サイクリックGMP(cGMP)の分解を抑制することで、NOの作用を増強する。
4 電位依存性L型Ca2+チャネルを遮断し、細胞内へのCa2+流入を抑制することで、冠動脈平滑筋を弛緩させる。
5 ATP感受性K+チャネルを遮断し、細胞外へのK+の流出を抑制することで、血管平滑筋を弛緩させる。
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問252 解答 1、4
本患者は冠攣縮性狭心症と診断され、発作予防薬としてベニジピン塩酸塩錠を、発作時治療薬としてニトログリセリン舌下錠を用いて治療が開始された。ただし治療開始後、未だに自覚症状が続いていることから、予防効果が不十分だと判定されており、治療方針としては発作予防薬の追加が必要であると考えられる。本選択肢中、狭心症の発作予防薬に該当するのは、一硝酸イソソルビド錠とニコランジル錠であり、薬剤師が医師に提案する追加薬剤として適切なのはこの2剤である。
なお、プロプラノロール塩酸塩やカルテオロール塩酸塩などのアドレナリンβ受容体遮断薬は、冠血管の攣縮を悪化するおそれがあるため、冠攣縮性狭心症への投与は避けた方が良い。
また、シルデナフィルクエン酸塩は、ニトログリセリンなどの硝酸薬との併用により、過度な血圧低下を引き起こすおそれがあるため、これらの併用は禁忌である。
問253 解答 1、4
1 正
一酸化窒素(NO)を遊離し、可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化することで、血管平滑筋を弛緩させるのは、ニトログリセリンや一硝酸イソソルビド、ニコランジルなどである。なお、ニコランジルは、ATP感受性K+チャネルを開口し、細胞外へのK+の流出を促進することで過分極を引き起こし、血管平滑筋を弛緩させる作用も併せもつ。
2 誤
アドレナリンβ1受容体を遮断し、サイクリックAMP(cAMP)依存性プロテインキナーゼの活性化を抑制することで、洞結節の活動電位の発生頻度を減少させるのは、プロプラノロールやカルテオロールなどのアドレナリンβ受容体遮断薬である。
3 誤
ホスホジエステラーゼⅤを阻害し、サイクリックGMP(cGMP)の分解を抑制することで、NOの作用を増強するのは、シルデナフィルである。
4 正
電位依存性L型Ca2+チャネルを遮断し、細胞内へのCa2+流入を抑制することで、冠動脈平滑筋を弛緩させるのは、ベニジピンなどのCa2+チャネル遮断薬である。
5 誤
解説1参照
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解説動画1 ( 11:16 )
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