薬剤師国家試験 令和05年度 第108回 - 一般 実践問題 - 問 262,263
13歳女児。身長150 cm、体重42 kg。昨夜から38.5℃の発熱があり、今朝になっても熱が下がらず、筋肉痛、頭痛、倦怠感を訴えたため、午前中に近医を受診した。インフルエンザと診断され、母親が処方箋(処方1及び2)を持って来局した。薬剤師が薬歴を確認したところ、バロキサビル マルボキシル錠による発疹の副作用歴があったので、薬剤師から処方医へ連絡し、処方1が処方3へ変更となった。
問262(薬理)
処方1及び3のいずれかの抗インフルエンザ薬の作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 RNA依存性RNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスRNAの複製を阻害する。
2 キャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を阻害することで、ウイルスmRNAの合成を阻害する。
3 ウイルスに結合してエンベロープの融合・脱殻を阻害することで、ウイルスRNAの宿主細胞への輸送を妨げる。
4 ノイラミニダーゼを阻害することで、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を抑制する。
5 RNA依存性DNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスRNAからDNAへの逆転写を阻害する。
問263(実務)
薬剤師が母親に伝える内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 平熱に戻った場合は、処方3の使用を中止してください。
2 解熱した翌日より学校に登校できます。
3 発熱時には、カフェインを多く含むお茶やコーヒーをとるようにしてください。
4 処方3は、本日中に服用を開始してください。
5 異常行動による事故を防止するため、お子さんが一人にならないよう配慮してください。
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問262 解答 2、4
1 誤
ファビピラビルに関する記述である。ファビピラビルは、細胞内でリボシル三リン酸体に代謝され、三リン酸体がRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害することで、インフルエンザウイルスRNAの複製を阻害する。
2 正
バロキサビル マルボキシルに関する記述である。バロキサビル マルボキシルは、小腸、血液、肝臓中のエステラーゼによって速やかにバロキサビル マルボキシル活性体に変化し、A型及びB型インフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を選択的に阻害し、ウイルスmRNAの合成を阻害する。
3 誤
アマンタジンに関する記述である。アマンタジンは、A型インフルエンザウイルスのM2イオンチャネルを阻害することで、エンベロープの融合・脱殻を阻害し、ウイルスRNAの宿主細胞への輸送を妨げる。
4 正
オセルタミビルに関する記述である。オセルタミビルは、主に肝臓で活性体に変化し、A型及びB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを阻害することで、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を抑制する。
5 誤
抗HIV薬のラミブジンなどに関する記述である。ラミブジンは、細胞内で三リン酸化され、HIVのRNA依存性DNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスRNAからDNAへの逆転写を阻害する。
問263 解答 4、5
1 誤
オセルタミビルカプセル75 mgは、平熱に戻った場合でも体内にインフルエンザウイルスは残っている可能性が高いため、最後まで飲むように指導する。
2 誤
インフルエンザに罹患した患者は、発症後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまでは登校できない旨を伝える必要がある。
3 誤
発熱時には、発汗により体内の水分が奪われ脱水症状を引き起こすことがあり、カフェインを多く含むお茶やコーヒーをとると利尿作用により脱水症状を引悪化させるおそれがある。そのため、脱水症状にならないよう、発熱時にはカフェインを含まない水やスポーツ飲料、経口補水液を飲ませるように指導する。
4 正
オセルタミビルカプセルは、インフルエンザ様症状の発現から2日以内に投与を開始する必要がある。本患者は、昨夜から発熱等の症状が出ている状態であるため、本日中に服用を開始するよう指導する。
5 正
インフルエンザに罹患した患者が、飛び降りなどの異常行動を起こしたことがあるという報告があるため、特に発症後2日間は子どもが一人にならないような配慮が必要であると指導する。
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