薬剤師国家試験 令和05年度 第108回 - 一般 実践問題 - 問 294,295

72歳男性。身長167 cm、体重75 kg。独居。喫煙40本/日、飲酒ビール1 L/日。15年前に血圧が高いことを指摘され、2年間薬物療法を行ったが、自己中断した。6ヶ月前に心筋梗塞を発症し、1ヶ月の入院加療を行った。高血圧症、脂質異常症、心筋梗塞のため以下の処方による治療とともに、食事療法、運動療法、禁煙の指導を受けている。なお、今回の来院時の検査値は以下のとおりであった。



（検査値）
血圧136/86 mmHg、K 4.5 mEq/L、血清アルブミン4.6 g/dL、
AST 28 IU/L、ALT 38 IU/L、γ−GTP 78 IU/L、
血清クレアチニン0.9 mg/dL、BUN 15 mg/dL、
総コレステロール198 mg/dL、LDL−C 119 mg/dL、HDL−C 55 mg/dL、
TG（トリグリセリド）120 mg/dL

問294（病態・薬物治療）
この患者の治療に関する記述として、正しいのはどれか。２つ選べ。

１　心不全の発症や進展を抑制する目的で、エナラプリルが処方されている。
２　心筋梗塞後の心室性不整脈を抑制する目的で、アムロジピンが処方されている。
３　心筋梗塞後の胸痛を緩和する目的で、アスピリンが処方されている。
４　薬剤性消化性潰瘍を防止する目的で、ラベプラゾールが処方されている。
５　HDL−Cを低下させる目的で、アトルバスタチンが処方されている。


問295（実務）
この患者に対して薬剤師が行う指導として、適切なのはどれか。２つ選べ。

１　禁煙補助剤を利用する。
２　タンパク質制限食品を利用する。
３　1日30分程度の無酸素運動をする。
４　現在の体重を維持する。
５　飲酒量を減らす。

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問294　解答　１、４

１　正
本患者は、高血圧症や心筋梗塞などの循環器疾患により心臓のポンプ機能が低下し、心不全を発症するおそれがあるため、ACE阻害薬であるエナラプリルは、その予防および降圧を目的として処方されていると考えられる。

２　誤
アムロジピンは血管選択性の高いカルシウムチャネル遮断薬であり、本患者の降圧を目的として処方されていると考えられる。なお、心筋梗塞後の心室性不整脈を抑制する目的で、処方されるのは、リドカインなどの抗不整脈薬である。

３　誤
アスピリンは抗血小板薬であり、心筋梗塞の再発抑制の目的で処方されていると考えられる。

４　正
本患者はアスピリンを服用しており、アスピリンのプロスタグランジン産生抑制による薬剤性消化性潰瘍に注意が必要である。プロトンポンプ阻害薬であるラベプラゾールは、アスピリンによる薬剤性消化性潰瘍を防止する目的で処方されていると考えられる。

５　誤
心筋梗塞などの冠動脈疾患の既往がある場合、その再発予防としてLDL−Cを下げておく必要がある。よって、HMG-CoA還元酵素阻害薬であるアトルバスタチンは、LDL−Cを低下させる目的で処方されていると考えられる。


問295　解答　１、５

１　正
本患者は72歳の高齢で、高血圧症、脂質異常症、心筋梗塞などの治療も行っている状態であり、禁煙指導を受けているが、いまだなお喫煙40本/日であるため、禁煙補助剤の利用を検討する必要がある。

２　誤
タンパク質制限は、一般的に腎障害患者に対して行われる。本患者は血清クレアチニン0.9 mg/dL、BUN 15 mg/dLと、特に腎機能に問題はみられないため、タンパク質制限食品を利用する必要はない。

３　誤
本患者は高血圧症や脂質異常症などの生活習慣病に罹患しているため、ウォーキングなどの有酸素運動を行うよう指導する。なお、無酸素運動は、筋肉トレーニングなどの短時間で負荷がかかる、酸素無しで筋肉を動かす運動のことであり、生活習慣病改善には向いていない。

４　誤
肥満度を表す指標にBMI（Body Mass Index）があり、以下の式によって求められる。

BMI＝体重（kg）÷(身長（m）)２
 18.5未満：痩せ型　18.5以上〜25未満：普通体重　25以上：肥満 

本患者は、身長167 cm体重75 kgでBMI約27であり、25を超えているため体重を減らすよう指導する。

５　正
1日の適正飲酒量は純アルコール約20 gであり、ビールで換算すると500 mL/日程度である。本患者は、ビール1 L/日飲酒しているため、飲酒量を減らすよう指導する。

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