薬剤師国家試験 令和05年度 第108回 - 一般 実践問題 - 問 302,303
58歳女性。企業の管理職として勤務している。最近仕事が忙しく、ストレスがたまっていた。勤務中、椅子に座っている時に背中の違和感を感じた。翌日、ズキズキと痛むような症状が発現し、患部を見ると赤く連なった丘疹が広がっていた。症状が悪化していることから、医療機関を受診し、診断の結果、以下が処方された。
問302(病態・薬物治療)
この患者の疾患と治療薬に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 ストレスによる免疫の低下は発症の危険因子である。
2 背中の皮疹は両側性に広がった。
3 プレガバリンが抗炎症作用を示すと期待される。
4 原因となるウイルスは皮膚内に潜伏していた。
5 痛みが強い場合には、アセトアミノフェンなどの鎮痛薬を併用してもよい。
問303(実務)
7日後、皮疹は軽減し、経過観察となったが、痛みが改善しておらず、対症療法を継続している。この女性は以前にも同様な発疹を繰り返していることから、ワクチンの接種を検討することになった。
本疾患に対するワクチン患者への説明内容として、適切なのはどれか。1つ選べ。
1 ワクチン接種は、次回発症時に行う。
2 生ワクチンと不活化ワクチンが承認されている。
3 ワクチン接種時は、バラシクロビル錠を服用する必要がある。
4 発症後にワクチン接種をすることにより、皮疹はすぐに軽快する。
5 ワクチン接種により、ウイルスを除去できる。
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問302 解答 1、5
本患者は主訴として「最近仕事が忙しく、ストレスがたまっていた」「背中がズキズキとして痛む」「患部を見ると赤く連なった丘疹が広がっていた」とあること、バラシクロビル錠が処方されている点などから、免疫力低下により帯状疱疹を発症したと推測される
1 正
帯状疱疹は、宿主の免疫低下が原因で、ヘルペスウイルス3型である水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで発症する。
2 誤
水痘・帯状疱疹ウイルスは、初感染後、脊髄後根知覚神経節などに潜伏感染し、免疫低下に伴い再賦活化(回帰感染)することで帯状疱疹を発症する。帯状疱疹は、知覚神経に沿って皮膚症状や、しびれなどの感覚異常を片側性に認めるのが特徴的である。
3 誤
プレガバリン口腔内崩壊錠は、帯状疱疹に伴う痛みに対する鎮痛作用を目的として処方されている。なお、本処方中、抗炎症作用を目的として処方されているのは、ジメチルイソプロピルアズレン軟膏である。
4 誤
解説2参照。水痘・帯状疱疹ウイルスは、脊髄後根知覚神経節などに潜伏感染する。
5 正
プレガバリンの他に、帯状疱疹に対する鎮痛作用を期待して用いられる薬剤として、NSAIDsやアセトアミノフェンなどがある。
問303 解答 2
1 誤
ワクチン接種は、抗原に対する獲得免疫を得ることが目的であり、対象疾患の発症を抑制することや、発症時の症状を軽減することが期待される。そのため、ワクチン接種は、次回発症時に行うのではなく、発症前に行うのが適切である。
2 正
現在、我が国での帯状疱疹ワクチンは、生ワクチンと不活化ワクチンが承認されている。小児の定期接種で実施されている水痘予防を目的とした生ワクチンが、2016年、50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防として、効能・効果が追加された。一方、2020年、50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防を目的に、新たに不活化ワクチンが認可された。
3 誤
ラシクロビル錠は、帯状疱疹の治療を目的に用いられる薬剤であり、発症前に接種するワクチンに併用する必要はない。
4 誤
解説1参照。ワクチン接種は、発症前に実施し、その症状発現を軽減することが目的である。発症後にワクチン接種を実施しても、症状がすぐに軽快する訳ではない。
5 誤
解説1参照。ワクチン接種の目的は、あくまで獲得免疫を得ることであり、ウイルスが除去できるわけではない。
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解説動画1 ( 08:42 )
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